INTERVIEW13


たくてぃTakuty

低音でクールな存在感ある声に抜群のルックス、関西人らしいひねりの効いた返しやくせの強いユニークな企画の数々。さらには巧みな歌で聴かせるなど、マルチなエンターテイナーぶりを発揮し、ゆるぎない人気を誇る。IRIAMデビューは2021年8月。

かっこよくて、声がよくて、歌もうまい。けれど彼の配信の魅力はそれらだけにとどまらない。日々何気ないやりとりをしながら、リスナーが心地よく過ごせ、安心感や満足感を得られる場所を維持するという、一見地味にみえて決して簡単ではない業。それを平然とやってのける能力こそが彼の最大の武器なのかもしれない。そんなプロフェッショナルなライバー・たくてぃのilluminaryに迫ります。

伸びるために選んだ拠点

―まずはたくてぃさんが配信活動をはじめられた経緯から伺えますか?

かなりさかのぼる話になりますけど、そもそもは「聞き専」というか、リスナーはじまりなんです。IRIAMではない別の配信アプリですが、知り合いに勧められたのがきっかけです。

そのとき応援していたライバーが配信をやめてしまったことでアプリ自体も使わなくなったんですけど、コロナの影響で時間的に少し余裕ができたので、たまたま目に留まった、これもIRIAMではない別の配信アプリですが、それを試しにダウンロードしたんですよね。もちろんそれもリスナーとして楽しむ前提です。ライバーに自分という存在を認識してもらいやすいよう、少人数のニッチな枠、たとえばおじさんがひたすらしゃべってるような枠に遊びに行ってました。

そこで「配信してみれば? 」って勧められて、しゃべることは嫌いじゃないしやってみるかってなったのがきっかけですね。
初回は2時間ほどやってもほんの数人しか来なかったんですけど、特に人数は気にせずその後も続けていたら、2、3カ月くらいで徐々にリスナーが増えていって。気づけばありがたいことに、半年ほどでまあまあ上位のライバーになってました。

でもちょうどそのころからかな、アプリ側が主催するイベントの内容がなんとなく単調になってきたんです。どうせライバーを続けるなら配信環境も見直してみようと、いろんなアプリをチェックし始めたんです。だから、機能性というよりは定期的な応援構造やプラットフォームとしての設計、運営体制なんかを基準に見ていったなかのひとつがIRIAMでした。

単純にすごい技術だなって驚いたし、一枚絵が動くおもしろさにももちろん引かれたんですが、それ以上にアプリ自体の存続性や、ライブ配信しやすい設計が大きかったですね。ここなら安心して配信活動を続けられると判断して、IRIAMを選んだんです。

「ライバーをやめる
なんて選択肢はない」

―ありがとうございます。
お聞きするかぎり、たくてぃさんはライバーになられて間もないころからずっと続ける前提で配信活動をされていたのですね?

確かにどんな状況であれ、ライバーをやめることはまるで考えていなかったですね。もちろん実利的な側面もなくはないですけど、何より大きいのは枠というコミュニティの魅力です。

自分が推される側になるなんて思ってもみなかったけれど、配信においては主役になれる。それはリスナーというかけがえのない存在があってこそ実現するものだし、何があっても自分のことを承認・肯定してくれる人が大勢いるコミュニティなんて、望んでもなかなか得られるものじゃないから。
そんな環境下で、ライバーをやめるなんて選択肢はなかったです。

けどIRIAMに来てみたらライバー数も多いし、贈られるギフトの量も違えば、人気ライバーの獲得ポイントもとにかく膨大だし。あらゆる規模感が違うのにはぼう然としましたね。まるで田舎から都会に出てきた感じ(笑)。

いろんなライバーがいて、それぞれのスタイルで華々しく活躍している。果たして自分はここでやっていけるのかって不安になったのを覚えています。

ネガティブな
あるあるを乗り越えて

―たくてぃさんにもそんな初々しい時期があったとは、新鮮です。
そんななかでもこれまでの実績やファンの方々がいらっしゃったことで自然となじめた感じですか?

もちろんついてきてくれたファンの方もいましたけど、基本はゼロからのスタートだと思っていたし、たとえIRIAMでうまくいかなくても元のアプリに戻るつもりはなかったですね。とにかくやれることはやってやろう、と。

おかげさまで、初見の方から顔や声を褒められたり新しいリスナーさんがついてくれたり、ひと月も経てば何となく配信のコツもつかめてきました。けど、決して期待しすぎないよう俯瞰視はしていましたね。これはライバーあるあるだと思うんですが、最初に力が入りすぎて結果が伴わないとダメージが大きいので。

それに、リスナーさんにもいろんな事情はあって、いくら応援したいと思ってもずっと枠に来られるか、いつまでギフトを贈れるかなんてわからないから。ライバーの都合で勝手に期待してもそのとおりにはならないのが現実だし、過度な期待は相手にとっても負担にしかなりませんしね。

実際に毎月トップファンが入れ変わるようなまだまだ安定しない状態だったし、どうすればランクキープできるかとあれこれ模索しては日々思い悩んでいました。これもライバーあるあるですよね。

その流れを断ち切れたのは、ほんと運でした。
自分、前のアプリから特徴的な「バッジコール」があって、IRIAMでもやっていたんですけど、それをおもしろがってくれたライバーさんがいたんです。コールを見せるために、自枠のリスナーさんたちを連れてきてくれて、みんなで一緒に沸いてくれた。それを機に盛り上がりスコアがぐんと上昇して、枠が目に付きやすくなったりその場にいたリスナーさんたちが定期的に来てくれるようになったり、立て直しの起点になったんです。そんな浮上のきっかけをくれたライバーさんにはいまでも感謝しかないですね。


―運も大事だし、それをきっかけにして波に乗っていくことも大事なのですね。
それにしてもたくてぃさんの企画はどれもユニークですよね。

企画でほかの人がやっていなさそうなことをするのはデビュー当初から変わってないです。枠を続けるうえでエンターテイメント性は必須だし、多面的であることも常に意識してやってます。

第一印象は立ち絵なんかの見た目やサムネイルの文言とか、表面的要素で決まるものだとは思うけど、ただかっこいいってだけじゃつまんないし飽きられちゃうと思うんです。
いろんな側面が何らかのフックとなって、ふと誰かの目に留まるきっかけになれば良いなぁと。だからTwitterとかでは意図的に企画内容とかおもしろいネタとかを中心に発信するようしています。

でも、あくまでも企画は飛び道具でしかないんですよね。割合でいったら、月30日配信している中の4、5日程度の話だし、配信の基本は〝何でもない日常コミュニケーション〟なので、それを来てくれた人がどう楽しんでくれるかが大事かなと思ってます。

自分の枠で大事にしてるのは、いかに居心地がいいか、初見で入ってくれた人がそのまま居やすい空間かどうかという点ですね。

一部のリスナーさんたちに言わせれば「女子トイレみたいな場所」らしいです(笑)。
いつ行っても誰か知ってる子と会えて、クラス内とは違った〝そこだけ〟の話題で盛り上がれるっていう。日常だけどどこか特別な場所であり、いい感じに気を許せる憩いの時間になっていることがわかって嬉しかったですね。

―女子トイレ!?意外な表現でしたが、理由を聞くと納得です。
そこでたくてぃさんは絶大な人気を誇る担任教師とか?憧れの先輩ですかね?

いや、さしずめ自分は「管理人」ってとこです。さっき自枠でライバーは主人公になれると言ったけれど、それは企画やイベントのときの話で、基本は「枠を守る人」って感じですね。

だから、その場所がみんなにとって気持ちよくあり続けるよう常に配慮するし、安心・安全に過ごせるよう必要な整備をする。 「転校生」ともいうべき初見の人がやってきたら、すんなり女子トイレトークになじめるような空気をつくるし、逆にそこでの会話がネガティブな話題に傾いてきたらうまく調整する。それが枠主としての本質的な役割かな。雰囲気づくりはとことん意識するようしています。

ライバーの原点

―すごく意外でした。たくてぃさん=ユニークなイベント企画というイメージだったもので。いい声で歌って笑わせてくれる頼れる管理人さん、最高ですね(笑)。

その声も、もともと自分としては別にいい声とも将来武器になるとも思っていなかったし。
って、さすがにいまは違いますよ?音声配信を始めてすぐに声を褒めてもらえて嬉しかったし、そこからいろんな人に繰り返し言ってもらえるようになってからもう長いんで(笑)。客観的にいい声なのだろうと認識できてはいます。
あと耳もいいらしく、初見の曲でも1時間くらい聴いていればだいたい頭に入る。それでリクエストされた曲を即興で歌うみたいな企画が成立するわけで、そういう意味ではありがたいなと。

でも、そもそもライバーに特別な個性はいらないと思っていて。声が良くなくてもいいし歌もうまくなくていい。枠にきてくれたリスナーさんと楽しくしゃべれたらそれでいいんです。
ただ自分だけが一方的に話すのではなく、来てくれた人の話を中心にみんなで盛り上がるようにしつつ、人数が増えたときでもその場にいるみんなが楽しめるよう、状況を俯瞰視しながら場を回していくことは常に意識するようしています。

さらに日々のやりとりがマンネリになったりしないよう、予期せぬ方向から返しをしてみたり新しいSEやBGMを使ったり工夫も凝らすとか。自分らしいエッジを立てつつ、あれこれ探りながらいろんなチャレンジをしています。

そこはライバーとしての意図というよりは、子どものころからの性格かな。クラスの中のおもろいやつになりたくて、毎日あの手この手でみんなを笑わせることだけ考えてましたね。そんな性分がそのままライバーのキャラとして出ているというか、うまくマッチングしました。ライバーはお笑い芸人ほど笑いの質を求められないし、ちょうどいいレベルなのかもしれない。

それに芸⼈は舞台上で⾒せることに特化したしゃべりだけど、配信は⽣活の⼀部だし、リスナーとの⽬線や距離も観客とのそれとは違う。放課後に同級⽣とわいわい騒いでる感覚や気軽さのような距離感なので。お互いにどちらが上でも下でもなくて、同じ⾼さに⽬線がくる感じを⼤切にしたいと思ってます。

生涯現役ライバー宣言

―貴重なお話をありがとうございます。たくてぃさんのプロフェッショナルなilluminaryが伝わってきました。そんなたくてぃさんがこれからめざすものとは?

聞かれるかなとは思ったので事前に一通り考えてはみたんですけど、自分、目標って特にないんですよね。配信は完全に日常の一部なので、そこで気張って何かやらなきゃってこともなく。あっても「オリジナルプチギフトを全部で10個集める」とか、目先のプロジェクトゴールくらいですね。

それでもあえていうなら「続けること」かな。
自分、枠をいい状態にキープすることの難しさを痛感した時期があったんです。一年近くSランク帯を維持していたとき、どうしてもランクキープに気持ちが持っていかれて、日々の状況で自分のメンタルが上下したり無駄に焦ったり。

もうどうしようもなくなって、ある日ファンの子たちと腹を割っていろんな話をしたんです。そこで気づかされたのが、リスナーがきつい状態でランクキープし続けたところで自分もリスナーさんも何も満たされないってことでした。それでちょうど一年Sランクをキープできたのを節目に、気持ちを一新して配信に臨みました。

結果、向き合い方が変わっただけなのに、枠の雰囲気がぐんと良くなったんです。肩の力が抜けて配信を心底楽しむことができたし、みんなとも気持ちが通じている実感もありました。そしたら、その時期を起点にファンバッジを取る方が急増したんです。それまではがんばっても50人ほどだったのが90人くらいまで伸びたんですよね。そういう意味でも、日常の大切さや配信を楽しむという初心を忘れちゃいけない。ライバーの目標=リスナーさんの目的ではないってことを常に意識しながら、いまの状態をキープしていきたいと思ってます。

つい先日もリスナーさんと「60歳くらいになってもライバーやってんのかね」なんて話になったんですけど。60を過ぎても自分がおもしろい配信ができているなら、それこそが自分の目標なのかもしれないですね。だからそれまでIRIAMも元気でいてください!(笑)

理想の追求

―たくてぃさんの目標のためにも、万全を期したいと思います。
それでは最後に、これからライバーをめざそうとされている方にメッセージをお願いします。

ライバーをめざそうとしてる人はきっと、IRIAMに関する情報をいろいろチェックしたり、イベントやギフトのこととか細かく調べたりしていると思うんです。でもあまり数値的な話には惑わされず、まずは配信の楽しさを体感してほしいです。

自分が中心になれる時間や、自分の話を聞くために人が集まってくれる空間なんて配信でしか実現しないものだし。型にはまったアバターじゃなく、いまのリアルな自分じゃない理想の自分をフレキシブルに表現できるIRIAMの根源的なおもしろさは、ほかではなかなか体験できるものじゃないしね。

配信に行き詰まっている人は、さっき自分が話したようなランクアップやキープにとらわれすぎているのかも。そこは同じスランプに陥った経験者として、ポイントを稼ぐことより配信の本質を見失わないことが大事だよって伝えたいですね。

あと、最初に気負いすぎないことも大事。トップバナーチャレンジで50位くらいでも、そこからSランクに行った人なんてざらにいるし。目先の結果や競争よりも継続することに目を向けて、とりあえず続けてみること。

それでどうにもならなければ、キャラ設定をつくり直せばいい。これまで積み重ねた日々を捨てるのは惜しいと感じるだろうけど、思い悩んでライバーをやめてしまうくらいなら建て直して再チャレンジすればいい。よほどの審美眼でもなければ、最初に選んだ立ち絵が最善とはいえないわけだしね。自分に合ってないと思ったらやり直せばいい。配信する中で自分の新たなキャラを発見できるかもしれないし、リスナーさんたちから教えてもらうことだってある。自分がリスナーさんたちに声いいと評価してもらえたり、意外に耳がよくて歌覚えが早いなんてことに気づけたりしたみたいにね。その特徴をキャラに反映していくのもあり。現に自分もいろんな企画に生かせています。

あまり深刻になりすぎず、IRIAMでの配信を柔軟に楽しんでほしい。自分が楽しめてれば、枠も自然と盛り上がるはずだから。お互い気負わずやっていきましょう!

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