INTERVIEW


雪原みかんYukihara Mikan

2018年10月のIRIAMリリース時から配信活動を開始したベテランライバー勢のひとり。ふわふわとした可愛らしい声と、見ている者をふと笑顔にする脱力系のおしゃべりで変わらぬ人気を集める。毎日18時と22時からの二部制で配信中。

その名のとおり、雪の寒い日でもその心地よい甘さとビタミンたっぷりの明るい元気で、ガチガチに固まった心身をほっこり和ませてくれるようなライバー。しかし、IRIAMリリース当初からの経験値と、配信一本で突き進む覚悟にはとてつもない強さが秘められていて、その「雪原みかん」を愛情たっぷりに育てるリスナー「民かん」さんの影もちらほら――。
果てなき<未完>のストーリー、ぜひこたつで暖をとりながらお召し上がりください。

自信が持てない自分を変えたい

―IRIAMのリリース当初からライバー活動を続けられている雪原みかんさんですが、そもそもライバーになろうと思われたきっかけを伺えますか?

小さいころから「声のお仕事」に興味があって、よくニュースキャスターさんや子ども向けの教育番組に出てくるMCのおねえさんの真似をして遊んでたんです。少し大きくなると、何気なく見ていたアニメにも声優さんという「声で演技をする」プロの方々がかかわっていることもわかって、そこから漠然とですけど声のお仕事ってステキだなというイメージをずっと持ち続けていました。

それであるとき、IRIAMっていうバーチャルライブ配信アプリがリリースにあたってライバーを募集しているという情報を見て、ふとオーディションを受けてみようかなという気になったんです。

当時はまだVTuberという言葉もそこまで一般的ではなくて、みかんもまるでわかってない状態だったから不安はあったし、声にもまったく自信がなかったんですけどね。だって、自分の声って本人はよくわからないじゃないですか。だから高校時代に周りが可愛い声をしてると褒めてくれても、ほかに良いところがないから気を遣って言ってくれてるんだろうくらいに思ってたんです。

声に限らず、昔から自分に自信が持てなかったんですよね。そんなネガティブ思考を断ち切りたい、自分から変わろうとしなきゃという思いでチャレンジしました。それがライバーをめざしたきっかけです。

―さらに実際の配信にあたっては声だけじゃなく話すことも重要になってきますが、そのあたりはいかがでした?

いやぁ、そこなんですよね......みかん、しゃべるのがめちゃくちゃ下手くそで。クラスの子としゃべるのでさえ苦手で自分からは話しかけられないし、聞いた話を広げられるタイプでもないし。

だからオーディション後、これから配信することが決まったときにはかなり不安がありました。その場でリスナーさんからもらったコメントに対して話したり、自分から話題を提供したり盛り上げたりするのは自分には難しそうだし、普段できていないことばかりだから。

けど、初配信では来てくださったリスナーさんたちのコメントに助けられて、最後まで途切れることなくしゃべれたんです! 声もものすごく褒めていただけて、嬉しいことにギフトもたくさん贈ってもらえました。いま思えば、あのころはめちゃくちゃちやほやされてましたね(笑)。
でもほんと配信を通してたくさんの人から声を褒めてもらえるようになって、そこではじめて自分に自信が持てるようになったんです。

「雪原みかん」がくれる
勇気と覚悟

―すごい、会話への苦手意識を「現場」で克服されたのですね!
そのままバーチャルの世界やライブ配信にも自然になじめたのでしょうか。

Twitterやネットニュースのコメント欄とかでの誹謗中傷を目にしていたので、ライバーをやるまではバーチャルにかぎらず、ネットの世界にはどこかネガティブな、怖い印象を持っていたんです。

けど、IRIAMではリスナーさんたちからいただくコメントがどれも肯定的で、この世界って楽しいんだな、みんなやさしいんだなって嬉しい驚きがありました。

あと「雪原みかん」としてだからこそ話せるというのもあるのかな。普段の自分だったら誰かが話してくれるのを待つばかりで、その場の空気を配慮する余裕も、盛り上げる会話力もないんですけどね。ライバーであるかぎりは配信中に気まずい空気にならないようがんばってコメントをもらうぞ🍊、この場をちゃんと仕切るぞ🍊という覚悟のようなものが生まれてくるんです。

といっても、そのころはIRIAM全体で配信スケジュールを組むライバー当番制のようなシステムだったので、みかんは月1、2回登場する程度でした。バイトが大変でなかなか時間がとれなかったんです。

スーパーのレジ係だったのですが、急なシフトや長時間の残業を頼まれる、いわゆる「ブラックバイト」でした。毎日つらくて、やめたいと思いながらそれを言い出す勇気がなくて、ずるずると続けていました。

その後IRIAMのシステムなんかが変わって、一般の方も加わったたくさんのライバーさんが自由に活動できる現在のスタイルになったんですけど、みかんは相変わらずのバイト中心生活だったので、不定期に細々と配信してる感じでした。それでも毎回必ず来てくれるリスナーさんがいてくれました。たとえ少人数でもみかんの配信を待っていてくれる人がいるならやり続ける🍊絶対にやめない🍊ってリスナーさんたちと約束したんです。

それから一年ほど経ってようやくそのバイトをやめられて、次はアパレルの販売スタッフだったので、自由になる時間が格段に増えました。並行して配信頻度も徐々に高められたんです。

配信一本で行くために
背水の陣で挑んだ1カ月

―それは大変な日々でしたね。そこから気持ちを切り替えて、現在のような配信ができるようになったのですか?

配信の内容自体はいまも昔もそれほど変わってないとは思うんですけど、前向きな気持ちで配信に臨めるだけで自然とできることも増えるし、視線が上がることで見える景色も変わりますよね。それとともに大きな後押しになったのが、いただいたIRIAMの広告出演の機会でした。より多くの人に「雪原みかん」のことを知っていただけて、たくさんの方が遊びに来てくださった。ちょうど走り出したあのタイミングで起用していただけたことに改めて感謝したいです。

そのころバイトの方でもちょっとした状況変化があって、配信に力を入れるのかバイトでステップアップをめざすのか、選択を迫られることになってたんです。バイト側の好意あるお声がけを断るなら別のバイト先を探すべきだと考えていたので、配信を続ける場合は次が見つかるまで一時的にバイトができなくなる。けど、広告出演で背中を押していただきながらも、ライバーだけに専念できるほどの実力も実績もなかったので、どうすべきかすごく悩みました。

でも本心では配信一本でいきたいと思っていたんです。それにちょうどIRIAMに「時間ダイヤ」制度が追加された時期だったので、もし自分がSランク帯まで上がれたら配信だけでこれまでのバイト代分をまかなえるってこともわかった。それで配信に賭けてみようと決意して、バイト先に退職届を出しました。退職までの猶予1カ月間でSランクまでいけるかどうか挑戦してみたんです。

そこからは申し訳ないけれど残業なしにしてもらい、同僚や友だちと過ごす時間も削って、とにかく配信に時間をかけました。
だからといって特に戦略もないまま、ただリスナーさんたちには熱量を持って「これから配信一本に絞って活動していきたいから応援してほしいです」って素直に話しました。ほんと熱意だけなんです。それでもついてきてくれた方が大勢いて、みんなが一緒に走ってくれた結果、一番下から目標のSランクまでたどり着けたんです!🍊🍊🍊

2021年の8月だったかな。当時はいまほどライバー数も多くなかったし、ち密な計算をしてというよりもやる気と勢いで突っ走れたからこそ実現できたことではあるんですけどね。本当にもうありがたくて、リスナーさんへの感謝しかなかったです。それに目標が達成できたことは何より自信になりました。

みんながいてくれるから
強くなれる

―厳しい経験を何年も続けてこられたみかんさんならではの強さというか、底力を感じます。

バイトには本当にいろんな意味で鍛えられましたし、強くなったとも思います。
でもバイトだけやっていたら、ここまで自分のことを好きって言ってくれる人には出会えなかった。直接リスナーさんたちと密なコミュニケーションができるライバーになってよかったなって、しみじみ思うんです。

レジ係もショップ店員も接客業とはいえお客さまと目を合わせないことだってあるくらいだし、お店に来る人もある程度限定されますよね。でもIRIAMは年齢層が幅広いしエリア制限もなし、スマホひとつあれば誰とでもつながれる。

リスナーさん側でジェネレーションギャップを言われる方もいますけど、みかんの家は両親や兄妹と仲が良くて、日ごろからいろんな話をしているので、比較的どんな世代の人とでも楽しくしゃべれるんです。

むしろ、親世代の話題にくわしすぎて、アンチな人に「実はみかんはおばさんなんじゃないか」とか疑われて、あることないこと噂されちゃうくらい(笑)。そうでなくてもいまの時代、ネットで何でも簡単に調べられるのになって思うんですけどね。

そうそう、ライバーを始めたころなんて、みかんの声がとある声優さんに似てるってことで、Twitterとかで好き勝手にもう言いたい放題。当時は自己肯定感もかなり低かったので、たとえ誤解やいわれのない中傷でもぜんぶ真正面から受け止めてしまって、傷つくことも多かったです。

って、つい話がずれちゃいましたけど、おかげさまですっかりたくましくなりました!
いまは変な嫌味とか言われても半分笑いに変えて受け流すとか、「そういうの、やめて!」ってちゃんと言うとかしています。

何を言われてもお客さま第一の接客業とは違って、IRIAMなら自分だけではどうにもならないときは周りのみんなが助けてくれるし、いざとなったらブロック機能が使えるのがいい。
もちろん配信の空気が悪くならない程度というか、場の空気を守るためというのが大前提ですけどね。安心感が違います。

「<お仕事>だから、
甘えてはいられない」

―アルバイトをやめたいと言い出せなかったみかんさんが、はっきり意思を伝えられるってすごい進化ですよね。もはや〝完熟〟状態じゃないですか。

とんでもないです! 熟してるどころか、よくみんなに「ポン」っていじられてます。ポンカンと見せかけて、実はポンコツのポン!(笑)

そうでなくても、強くなるというか枠を守るのはライバーとして当然の務めだし、実際にお金をいただいている以上は「お仕事」だから、甘えてはいられない。
それに、何かしらストレスが生じるバイトとのかけもち生活に戻らず、ライバー一本でIRIAMを続けるためにはどうしてもSランクを維持しないといけないわけだから、自分に課したタスクを全力でやりきって当り前なんです。

だからといって、そんな自分の都合をネタにしてギフトをお願いするのは筋が違うとも思うので、そこはみかんの配信を心から楽しんでくれるリスナーさんが自然とそんな気持ちになれるよう、どんどんコメントしたくなるような空気をつくれるようがんばらなきゃと思ってます。

―所属事務所の発表では年間の総コメント数が約72万件と、みかんさんの配信が圧倒的でしたよね。

こんなポンコツにほんとありがとうっ!🍊て感じですよね。70万件って、単純に日割り計算しても一日2,000件近いコメントをもらえてたってことなので、自分でもめちゃくちゃ驚きました。

そうとも知らず、去年の年末ごろは「ネタがなくて困る」「なんでコメントしてくれないんだ~」って愚痴ったり、とにかく何でもいいからコメントしてっておねだりしまくったりしてた。そんな態度を気の置けないリスナーさんに注意されたくらいでした。

あえて厳しい言葉をくれる
リスナーさんの愛情に感謝

―去年の年末ってつい最近の話ですよね? もう何年もライバーを続けてこられたみかんさんがまだ注意されるのですか?

はい、だから「ポン」なんです。
リスナーさんやファンの皆さんとはどこか家族のような身内感覚があるので、沈黙があってもどこか心地よい、黙っていても変な空気にならない関係性が成立してはいるんですけどね。それでも自分だけがずっとしゃべっているのも寂しいし、配信終了間際になるとそのネタも尽きてしまって......ついリスナーさんに依存しちゃう。「寒いね」でも「バナナが好き」でも何でもいいからコメントほしいって大騒ぎしてたんです。

そんなとき、ファンの人が叱ってくれた。受け身で欲しがってばかりで、常連リスナーに頼れば何とかしてくれるという発想でいたら、毎日無難に過ごせてもこれ以上ファンは増えないよ。新しい人にもっと話しやすい環境や雰囲気をつくんなきゃダメ。みかんのいいところが伝わるように、もっとしゃべり方にも気を配ったほうがいい、って言ってくれたんです。

言われて気づくっていうのも恥ずかしいんですけど、それで目が覚めて、しっかり初見さんに向き合うようになりました。挨拶だけで終わるんじゃなく、どんどんコメントを引き出せるようにキャッチボールしやすい話し方を心がけてます。

それでも初見さんって話かけられると怖いみたいで、みかんが挨拶しかしてないのにびっくりしてすぐにどっか行っちゃうんですよね。もし誤タップ入室だったとしても、「間違って入った」だけでもいいし、「そっとしといて」でもいい。とにかく何か一言もらいたくて話しかけるんだけど、怖がられちゃうんです~。

あとで仲良くなれた初見さんに聞くと、意外にも恐れ多かったって言われることが多くてびっくり。広告を見て来たものの、突然本物が目の前にいると何を話していいかわからないし、話しかけられても緊張しちゃってコメントなんて無理だって言われて......

それ聞いた常連さんたちがすかさず「そんなビビるような、大したやつじゃないから平気だよ!(笑)」って和ませてくれました。実際そのとおりだし、みんなもフランクだから大丈夫だよ。いつでも「よっ!」って感じで気軽に入ってきてほしいです🍊って、この場でぜひとも伝えたいです!


―しっかり書いておきますね(笑)。
では最後に、これからIRIAMを始めようとされている方にアドバイスをいただけますか?

ライバーになろうとしている方はきっと自分の理想とするキラキラした姿や完璧なキャラクター像を描いて始めようとされていると思うんですけど、多少は息抜きができる「隙」のような部分を残しておくことも大事だよってことかな。

もちろん好きなキャラクターになりきって自分にない個性を楽しむのもステキなんですけど、すべてを理想どおりに固めてしまうと自然なおしゃべりができなかったり、とっさのときに言葉に詰まったり反応できなかったりしちゃうから。IRIAMはリスナーさんと近いし、雑談という日常や本音が出やすいやりとりも多いので、みかんの経験上ですが、自分の個性や持ち味を生かしながら「なりたい自分」に近づいていくとスムーズかなと思います。

始めてIRIAMに触れて楽しもうとしている人には、さっきも言ったけどぜひコメントしてみてほしい。ただ聞いてるだけがいい「ロム専」の方は別として、そうじゃないなら勇気を出して挑戦してみてほしい。ライバーさんも絶対喜ぶし、自分もより楽しめるから。何ならライバーからいろんなエピソードを引き出すぞとか、推しを自分が盛り上げていくぞって勢いで臨むのもありです!

ライバー側はライバー側で、そうした想いの詰まったコメントをしっかり拾うこと。配信の最後まで居させるぞって気持ちで相手に向き合うことをみかん自身も大切にしなきゃなって思っています。

あと、実生活ではできないこともIRIAMなら挑戦できるし、それを応援してくれるリスナーさんたちにも恵まれるわけなんですけど、いくら周りが肯定的だからといって、ただおだてられて変な方に向かうのはちょっと違うかなって。本当のファンならライバーが間違った方へ進もうとすれば、みかんのリスナーさんのように止めてくれるから。たとえ厳しい内容でも、嫌われるのを承知でライバーのためにくれる大事な言葉を「アンチか!」ってとらえるのではなく、ちゃんと是非を見極めてできることを実践してほしい。リスナーさんの言葉で自分が救われることってほんと多いから。

といった、みかんが長年配信を続けている中でのいい話や悪い話を何でもはっちゃけるので、いつでも枠に来てください。めっちゃ勉強になるよ~!(笑)
あと、もしみかんがランクキープに困ってそうな姿を見かけて、もし皆さんに少しでも余裕があったなら、「最年長さん」をいたわる気持ちで応援してやってください!🍊 よろしくお願いします!🍊🍊🍊🍊🍊

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