INTERVIEW

宿

宿木りっかYadorigi Ricca

2020年12月にオープンした「りっかのお宿」の看板娘で、IRIAMの世界に生きる冒険者さんたちの癒し処となるべく、日々お宿の仕事にいそしんでいる。お宿は、やさしい声の看板娘や気さくな宿泊客=宿っこさんと話をしながら、いつも安心してゆったりくつろげると評判を呼び、リピーターが後を絶たない。

芽を出した当初ははかなげで、周囲が見守らなければ折れてしまいそうだったその木は、強力な仲間を得ると、この世界の温かさや厳しさ、喜び、すべての経験を栄養としながらしなやかに成長し、揺るぎない大木へと進化を遂げた。
さらに、目まぐるしく変化する環境に適応して常にアップデートし続ける彼女の配信=お宿の最大の強みは「この人のためなら」と自発的に動き、かつ一体となって協働できるリスナーさん=宿っこたちの存在。また、そうさせる宿木りっかその人の魅力と卓越した統率力にほかならない。
そんな愛されお宿の流儀に迫ります。

お宿のはじまり
~ 看板娘、初日からうなされる ~

―まずは看板娘に着任された経緯についてお伺いできればと思います。以前もどちらかのお宿で働かれていたのですか?

そもそも「看板娘」って自称する肩書きじゃないよね、って周囲から愛あるツッコミをいただいてもいるのですが(笑)。それはさておき、お宿で看板娘を務め始めたのはIRIAMが最初でした。

それまでは、失礼ながらIRIAMのことも知りませんでしたし、お宿で働いた経験もありませんでした。もちろん世の中にはさまざまなライブ配信サービスがあるということは知っていたし、興味も持ってはいたけれど、自身が保守的なタイプなのもあって、自らチャレンジしようとは思っていませんでした。

配信アプリのサービスに対してというよりは、ネット社会に対するざっくりとした不安が先ですね。ツイートの炎上とかデジタルタトゥーなどのトラブルが日常化して、プライベートが守れないとか不測の事態がつきものだというバイアスがかかっていたので、とてもではないけれどライブ配信なんて無理だと思っていたんです。

そんなとき、IRIAMで配信してみないかというお誘いをいただいて、顔出しがないなら大丈夫かな、ちょっと試してみようかなくらいの気軽な感覚で始めたのが最初でした。

ただ、リスナーとして初めて枠を訪れたときは怖かったですね。みんなが盛り上がっているのを遠くから見るような、家でラジオを聴くような感覚で入室したら、いきなり配信者と目が合って、名指しで話しかけられて......相手から自分がしっかり見えていることにびっくりして萎縮してしまった感じです。

それでも二度目からはある程度の心構えができました。当時は枠まわりという文化も知らなくて、デビューまでの数日でほんの2、3枠しか見に行っていなかったんですけど、徐々に感覚を慣らしながら配信に対するリテラシーを上げていった感じです。

お宿開業
~ 仲間たちの支えで崖っぷち離脱 ~

―それでも、りっかさんのご手腕があれば、開業当初からスムーズに宿泊客をもてなされたのではないですか?

とんでもない、初めてのときはとにかく挨拶しかしていなかったです。
というのも、配信者ってラジオ感覚でしゃべっているイメージだったのですが、実際は双方向のコミュニケーションなんですよね。やり始めてからそれに気づいたものの、時すでに遅しでした。

初日は朝と夜に30分ずつ配信したんですけど、寝るときに目をつぶるとコメント欄が流れてくるんですよ(笑)。完全にうなされてました。コメントの一部にセクハラ的なものが含まれていたのもショックというか、ネット社会の洗礼を受けたような感じで、開始3日でやめたくなってしまって。

でも勧めてくださった方に申し訳ないし、せっかくすてきな立ち絵も描いていただいたのだからと、せめて3カ月は続けようと思い直したんです。

あと私、トップバナーチャレンジでも結果が振るわなかったことで、かなり弱気になっていて。開始早々やめたくなったことや不安な胸の内を配信中にふと漏らしたのを聞いて、初配信からずっと来てくれていたリスナーさんが「自分がこの子を支えなきゃ」って思ってくれたらしく、それから親身になって応援してくれたんです。「自分がどう動けば枠がうまく回って盛り上がるのか」など、ライバー以上にライバー目線で先々のことまで見据えて、いろいろ試行錯誤しながらお宿のために取り組んでくれました。

あまりに献身的にサポートしてくださるものだから、しばらくの間、この人はきっとIRIAMの方で、覆面リスナーとなって新人ライバーのデビュー期を支えてくれているに違いないと思っていたくらいで(笑)。ほかの配信者の凸待ち配信に参加しているのを見て、あ、違うんだって。純粋にリスナーさんなんだって認識できたと同時に、本当にありがたいことだなって改めて感謝しました。

いまや「枠主さん」と呼ばれているその彼の思いや熱意に対してポジティブに共感して、心強い仲間になってくれたリスナーさん=宿っこたちにも恵まれて、さらに取り組みが進んだことでお宿の堅固な基礎部分を築くことができたんです。

お宿の転機
~ 上位入賞で一石「多」鳥!? ~

―IRIAMの世界に広がる思いやりや温かい文化は、そうしたリスナーさんたちの存在があってこそ生まれ、育まれていることを改めて実感しました。
それでりっかさんも無事、お宿廃業の危機を乗り越えられた感じですか?

もちろん心理的安心性は一気に高まったのですが、お宿の存続という観点でいうなら転機はもう少し先。はじめてから4カ月ほど経ったころに参加した、オリジナルプチギフトイベントで入賞できたことが大きかったです。

私、枠で何をやろうが結果がすべてというか、成果は数字に表れるものだと考えるところがあるので、イベントに参加するなら入賞しなきゃ意味がないと思っていて。トップバナーチャレンジの結果から、やっぱり配信に向いていないのかもという自己否定感がぬぐえなかったんです。

それでも宿っこたちに助けられながら続けていたら、ギフトをいっぱい贈ってくださる方がだんだん増えてきて、さっき言ったランキング型イベントでは入賞と、ようやく実績がつくれた。
自分にはあまり価値がない、没個性だと思っていたなか、こんなに応援してもらえるんだってことが嬉しかったし、大きな自信にもなりました。さらに、その応援や期待に応えたいという想いが一層強くなって、そこからはノリノリでお宿業に向き合えるようになったんです。

それに、イベントで上位にランクインするだけでいろんな人の入室機会が増えるし、イベント中の盛り上がりスコアが上がることで人が入ってきやすくもなる。イベントってたくさんの人に知ってもらえるチャンスなんですよね。
だから、イベント参加の節目節目で新しい仲間が加わっていく。入賞という結果だけじゃなく、その機会にお宿の存在を知ってもらってさらに伸びることができる。いろんな意味でイベントは大きな起爆剤だと考えています。

同時に、イベントが「ハレの日」なら、お宿の日常である「ケの日」も同様に、イベントで新たに増えたリスナーさんたちをお宿につなぎとめようと、ゆったりくつろげる雰囲気づくりをしてくれるひたむきな宿っこたちの力添えがあって、ありがたくもお宿をずっと持続できているんです。

宿
  

―枠主さんを含め、宿っこの皆さんが自発的に応援したくなるのはりっかさんの魅力があってこそですから。そこは自慢の看板娘あっての順調経営かと。

つい先日、お宿がリニューアルしたタイミングで、改めてうちのお宿の魅力について皆でブレストしてみたんです。そこで出た意見には、私自身の強み......たとえば立ち絵であったり声であったりを褒めてくれるものも多かったのですが、それは大半のライバーに当てはまる平均的な要素であって、それだけで枠が伸びるわけではないですよね。

対して、うちならではの強みと言ったらやはり「リスナーの想いの強さ」だと思います。

だから配信するときは私、とにかく「リスナーさんが輝ける場所をつくる」ことを意識しています。ファシリテーターに徹するっていうのかな、そこは結構重要視していますね。
ライバーっていうと自分が主体となって歌とか演奏とかいろんなコンテンツを披露するとか、雑談だとしても自分はこんなことをした、こう思うって、すべて自分起点で物事を進めるようなイメージがありません?

でもそれだけだとみんなで楽しめていないような気がするというか、せっかく双方向でコミュニケーションができる場なので、私はとにかくリスナーの皆さんの話を聞くんです。その時々でみんなが主役になる瞬間を創り出す、っていうのかな。それぞれのコメントをしっかり拾って、お宿としての合意を取りまとめてひとつのゴールを導き出したり、さらに拡げて次につなげたり。そういった場所づくりが看板娘としての大事な務めだと思っています。

なのでお宿では一対一のチャネルではなく、一対集団のコミュニケーションが軸になります。「集団」と言っても決してその他大勢という意味ではなく、輪になってみんなで話しながら「いま○○さんからこんな意見が出たけど、△△さんはどう思う?」って一人ひとりをセッションの中にどんどん巻き込みながら、コミュニティの一体感を高めていくんです。

それを日々続けていると、自然とリスナーさん同士の壁がなくなってきて、それぞれの性格や人となりもわかってくる。お宿のなかで個々のアイデンティティが確立して、皆が自発的に活動しやすくなるし、リスナー間でのコミュニケーションも活発になるから、もはやお宿の外でも勝手に盛り上がっていたり、私の知らないところで何らかの企画が進んでいたりもするんですけどね(笑)。

お宿のココがおもしろい
~ ありそうでなかった未踏の境地 ~

―確かに、宿っこの皆さんはTwitterなどでも精力的にお宿の支援活動に励まれている印象があります。

Twitterで言うと、日々の配信記録をまとめた「#宿っこ日記」、おいしいごはんタグ「#宿木食堂」に筋トレ履歴の「#宿木ビルドアップ部」などがありますが、元はすべてリスナーさん発信なんです。特に「#宿木食堂」は、宿っこ経由で美味しそうな画像がどんどんアップされるので、いまや私のタグだとはご存じない方々にも楽しんで閲覧いただけているようで。そんな広がりもまた嬉しいですし、もちろんお宿を知ってもらう機会につながることもあります。そんな風に、配信をきっかけにこちらが想像していないモノやコトが次々と生まれてくるんですよね。リスナーさんっていろんな意味でライバーを助けてくれる存在だなって思います。

あと、うちの枠の強みでいうと「箱」があることだと思っています。「お宿」っていうコンセプトは一見さんもいればフラッと立ち寄る方もいるし、常連さんもいる。それぞれの日常から離れたその非日常的空間を皆大事に共有しながら、互いに干渉しすぎることなく、個々が思い思いにゆったりと過ごして楽しむ。ただしマナーが守れない人にはご遠慮願う。

そういった適度な距離感を保ったうえで、自分の定宿だったり思い出の場所だったりするお宿が万一経営難で苦しくなっていたら、そのときはお客さまがエールをくれたり駆けつけて助けてくれたりする、とか。「お宿」ではそんな特殊な関係性が成立しているんです。

IRIAMでうち以外の「宿」をまだ見かけたことがなくて、そういった独自のコミュニティを築けているというのは誇れる部分ですね。デビュー前にしっかりコンセプトを練って決めたのですが、まさかここまでうまく機能するとは。いま思えば、よく〝降りて〟きてくれた! って感じですね(笑)。

お宿と豆の木
~ 看板娘は戦略家 ~

―見事な戦略です。
ハッシュタグでいうと、りっかさんはよくIRIAMからの「投げかけ」に応えてくださっていて。「#IRIAM助かるリスナーさん」企画では凝った動画付きで投稿してくださいましたよね。

あれこそ、まさに戦略ですね。
「#助かるリスナーさん」企画が公開されたとき、ほかの人がやらなそうなことを考えて、さすがに動画を上げる人はいないだろうと思って動いたものです。

何らかの投げかけに対して、いち早く食いつけるのがライバー力だと思うので。ハッシュタグも面倒くさがる人がいますが、IRIAMの運営さんたちはちゃんと見てくれていると信じていたし、無料で公式メディアに掲載されるチャンスなんてめったにないですから。

ライバー活動として、可能性のある場所にたくさん種をまくべきだと思っているので、公式からの投げかけに対しては、お宿を知ってもらうための戦略や種まきとして鋭意取り組んでいます。
実際に「#助かるリスナーさん」のnote掲載がきっかけで、私のことを知ってくれたりお宿を訪ねてくれたりした方も少なくなくて。まいた種からちゃんと芽が出ているんですよ。

―IRIAMのメディアやさまざまなメッセージをそのようにとらえていただけるのは嬉しいかぎりです。
機動力ある敏腕看板娘に、自発的にお宿に全力コミットしてくれる宿っこさんたち。最強の布陣ですね。唯一無二のお宿の魅力も含め、りっかさんのゆるぎないilluminaryなのかなと。

そのように言っていただけてありがたいです。正直、特に目立っているわけでもなくランクも中間である私がなぜイルミナリーにと思っていたのですが、お宿のあり方も含めて見てくださってのお声がけであるなら嬉しいです。

これまでイルミナリーを拝見していて、多様なライバーを紹介してくださっているのがありがたいというか、私がデビューするころにこれがあったらなって思っていました。何か参考になるロールモデルが欲しかったのですが、当時IRIAMの公式サイトに掲載されていたのは自分にとってどこか雲上人のような方々のインタビュー記事でしたので、ただ憧れの対象として読んでいる感じだったんですよね。

イルミナリーでは多様な活動パターンやいろんな要素を見せてもらえるので、この人だったら自分に合うとか、正解を導く最短コースが見つけられるのかなって。なので、私のインタビューでも同じく中間層にいる人やアイデアに困っている人にとって何かのトリガーになってくれたら嬉しいです。

お宿は続くよ どこまでも
~ めざせ、サステイナブル ~

―コミュニティを育てていくのは簡単なことではないですが、「お宿」のようなあり方もあることをライバーさんはもちろん、リスナーさんたちにも知っていただき、IRIAMの楽しみ方を広げていただけたらと思います。
そんな戦略家・りっかさんの目標を教えていただけますか。

目標ですか? うーん、なんだろう......
目標とはいえないかもしれないですが、そうですね、とにかくお宿を維持していくことかな。

お宿はもうみんなの日常の中に食い込んでしまっている存在なので、こちらの都合でなくすなんてことができないんです。

やめたいときや声が出ないようなときにこれが潮時かもと思うことはあるのですが、お宿は私一人のものではないし、宿っこやファンマークをつけてくれている人、立ち絵を描いてくださった方、遠くで見守ってくれる方々など、多くの人に支えられている場所だから。看板娘として、大事に守り抜かねばと思っています。

それに、一概に維持といってもずっと現状のままでいてはいつか廃れてしまう。リアルな経営やビジネスと同様に、変えるべきところと変えないところを見分けて、刻々と変化するIRIAMのなかでもちゃんと残っていけるよう順応できる、持続可能なお宿でなければならない。

時代に合わせて、ときには先んじてお宿を発展させながらサステイナブルをめざしたいと思っています。

と、その前に、私の配信スタイルはヒアリングをしてお話しするのが基本なので、相手側のコメントが遅いと成立しません。だからラグなしのIRIAMでなければお宿を運営できないし、IRIAMとは一心同体なんです。IRIAMがつぶれたらお宿もつぶれちゃうので、母体としてずっと盤石でいてくださいね!

ようこそ、くつろぎのお宿へ
~ 歓迎・IRIAMユーザー御一行様 ~

―しっかり肝に銘じて、一同尽力いたします!
それでは最後に、これからライバーになろうとされている方にメッセージをいただけますか。

この記事を読んでくださっている方の個性やスタイルは多種多様だと思いますし、私のエピソードがすべての方に当てはまるわけではないので、あくまでも自分自身が配信するうえで大切にしていることをお話ししますと、常に忘れないようにしているのが「すべてにおいてエンタメであること」です。

自身の配信が、リスナーさんを楽しませるサービスとしてちゃんと成立しているか、ということ。
Twitterなども含め、発信する内容が立ち絵やキャラに合っているか。リスナーさんとの共感ポイントに合った話題のチョイスができているか。ライバーの自己満足を配信に乗せていないか。自分が楽しむことも大事だけれど、見に来てくれる人を想い、楽しませることを忘れないってことですね。慣れのなかでつい甘えたり依存しすぎたりしていないか、常に見直すようしています。

だからといって、無理をしてでもリスナーさんに合わせるべきだとか、望まないことをやれだとかいう話では決してないです。置かれた状況や事情は一人ひとり異なるし、自分一人ではなかなか判断が難しいものだから、何かに迷ったり悩んだりしたときにはいつでもお宿を訪ねてください。看板娘と面倒見のいい宿泊客と一緒に、お宿でじっくり考えましょう。

そうでなくてもリニューアルして一段とブラッシュアップした自慢のお宿に、ぜひ泊まりに来てください。従業員一同、心からお待ちしています。

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