INTERVIEW



華宮ももかHanamiya Momoka

地上1万メートルの天空から群馬県に落下してきた、桃の帝国の最高権力者。いまは都内で強くたくましく生きる桃姫のIRIAMデビューは2022年2月。声優としても活動しながら、雑談と歌を中心にまいにち配信中。

自身が言うように、彼女の投げることばはストレートの剛速球一択。一切のブレもなく、受け手のど真ん中に突き刺さる。強くてキレがあるだけではなく、大切な相棒が最も自然にキャッチできるよう配球する、やさしさに満ちた彼女のルーチン。
何事にも真っ向から向き合ってジャッジし、白黒はっきり明示することで、リスナーが迷わずひとすじに、共に華宮ももかの輝くミライをめざして歩んでいける。その常にリスナー優先の横断歩道はきっといつしか最高のビクトリーロードになることだろう。

絶対に後悔したくない

―配信を始められたきっかけを教えてください。

コロナ禍の影響でアルバイトのシフトが減ってしまって、この先について知り合いに相談したとき、配信をやってみればとIRIAMを紹介されたんです。それまでVtuberの配信を見たこともなければ、自分がやる側になるなんて考えもしなかったのですが、やり方によっては収入になるらしいと聞いて興味を覚えました。

それで配信がどういうものなのか見てみようと、IRIAMを始めてみたんです。枠を回っていてまず思ったのが、みんなどうやって1、2時間もしゃべり続けていられるんだろう。自分がやるならネタ帳や台本を用意しなきゃ無理そうだなってことでした。

ほかにもマナー違反のリスナーが来て困ったときの対処法とか、どんなときにリスナーさんがギフトを贈ろうと思うんだろうとか、気になったことはぜんぶ細かくメモをとってましたね。きれいごとを抜きにして、バイトの代わりとして配信していくなら、ちゃんとギフトをもらえるライバーにならなきゃで。続けていくことを考えると、そこはどうしても避けられない課題だったんです。

あとは公式サイトやネット情報をチェックしたり、「時間ダイヤ」をベースに、もしこのランクで一日何時間配信したら毎月どれくらいになるか試算してみたり。3カ月くらいかけてみっちり準備しましたね。

というのも私、あとから「こうやっておけばよかった」と悔やむのがほんっとに嫌なんです(笑)。だから見落としややり残しのないよう、デビュー前にできることは全部やりきる気持ちで臨みました。

トークではなく会話

―そこまで準備されての初配信であれば思いどおりに進められたのでは?

ずっとじゃがバターを食べてた記憶しかないんですけど(笑)、初配信は10時間やりました。1カ月後のトップバナーチャレンジを意識していたので、デビュータブで注目度が高まる時期に一人でも多くの方に見てもらいたくて。初回から長時間やろうと決めてたんです。

最初はすごく緊張してました。まずはあいさつだと思って、用意していた自己紹介文を読んでいたら、続々とコメントで呼びかけられて。これは台本を読んでる場合じゃない、そっちに応えなきゃ! って、開始早々に台本を投げ捨てました(笑)。

IRIAMの配信はトークじゃなくて会話なんですよね。声とテキストのやりとりでも、IRIAMはほとんどラグがないからリアルと同じ感覚で会話できちゃう。リスナーさんとも話が弾んで、配信って楽しいなって。自然と緊張もほぐれて、合間合間に前もってゆでていた巨大なじゃがいもをちびちび食べてエネルギー補給する余裕もできたおかげで、目標の10時間配信を無事に達成しました。

ランクキープの難しさ

―初日から10時間とは驚きです。それに、その時点ですでにトップバナーチャレンジを見据えていらしたのですね。

トップバナーチャレンジそのものというより、その後の継続まで見越していろいろ考えてました。もちろんトップバナーチャレンジでは1位をめざして企画を練って、詰められるところはギリギリまで詰めて備えたし、期間中は体を張って「桃の国の民」と呼んでるリスナーのみんなと一緒に最後まで全力で走りました。だから結果の2位は正直めちゃくちゃ悔しかったです。

でも結果より、自分にとっては「継続すること」が大事なので。うちの枠に限らず、トップバナーチャレンジで最高潮まで上がった熱量が、イベント終了後には一気に冷めて落ち着いてしまうのが当たり前のところ、生活のためにはどうしてもランクキープしなきゃいけないわけで。
だからあと数ポイントで1位をとれたとしても、そのポイントはいまじゃなく来週のキープの方で協力してとお願いしたり、民のテンションが上がるよう日々の配信でも定期的に企画を盛り込んだりしました。

けれどだんだんネタが尽きてくるし、どうしても慣れが出てくるからさらに刺激を足さないと同じようには盛り上がらない。お礼グッズを用意するのにも手間やお金がかかるし、作業のために配信時間も削られてと、ランクはキープできていても実際のところはかなり追い込まれていたんです。

そんな状態なのに、周りからは「ももかちゃんはいつも余裕があっていいね」「不動のSランクを支えてくれるリスナーに恵まれてうらやましい」みたいなことを言われがちで。内心では「毎回ギリギリだわ!」「泣きたいくらい追い込まれてるわ」と思いながらも、私自身が人に弱みを見せたくない性格で。努力やがんばりなんかも内に秘めて、常に余裕ぶって見せたいタイプなので、泣き言はいわずに平気なそぶりで耐えてました。

―ももかさんのポリシーどおり、Sランクキープの背景にそのような体験や想いがあったことにまるで気づきませんでした。

そうですよね。でもライバーとしてはリスナーに自分の想いや状況をきちんと伝えなきゃだめだってことに気づいたんです。
楽しく配信している反面にはランクキープのつらさや追い詰められる恐怖が常にあることを桃の国の民として知っていてもらいたい。同じ国の民として、姫と同じ目線で同じ熱量で心底共感してほしいなって。

だから私もただ「大変だからギフトが欲しい」とお願いするのではなく、まずは配信時間を延ばして、全力でがんばる姿勢をありのまま見せて、ちゃんと本気度を伝える。それでも無理そうだったら、どれくらい大変なのか、どうすればクリアできるのかを丁寧に伝えるようしました。

同じ「大変」でも人によって感覚が違うものだし、受け止め方もそれぞれ異なるってことに気づいたんです。まいにち配信し続けているとひとりひとりの民のことがわかってくるもので。最初はプロフィールに書かれていることから知っていって、繰り返し会話をするなかで性格やクセがわかってきて、そのうち何も話さなくても「こういう人だ」って理解が深まる。コメントがなくても「あ、この子いまの話聞いてなかったな」なんてことまで気配でわかるようになるんです。

もともと私、良いことも悪いことも何でもはっきりストレートに話すタイプなんですけど、内容だけじゃなく、話し方や話すタイミングもそれぞれ民に合わせて伝えることが大事。相手の立場になって考えるようになりました。

配信を始めて半年くらい経ったころだったかな。民にも想いが伝わって、共感してもらえてるのがわかってすごく救われたんです。何でも相談できるようになって無駄なすれ違いも減ったし、民だって無理なときは無理だと言える、お互いに心地いい関係性を築けました。少し肩の力も抜けて、ランクキープ以上に配信そのものを楽しめるようになりました。

二兎を追い始めた一途な姫

―コツコツ続けていたものが大きな変化につながった瞬間ですね。

そんなとき、民から「ランクキープだけじゃなくイベント入賞もめざしたっていい。応援するよ」と言ってもらえて、自分の中でも大きな変化が起こったというか、ランクキープだけじゃなくイベントもめざしていいの? って、ほんとびっくりでした。民がそこまで華宮ももかの背中を押してくれるんだって、めちゃくちゃ嬉しかったし、ただただ感謝でした。

そこで初めてランクキープとイベントとの両立を考えることができたのですが、両方望んでいいとはいえどうやったらイベントに入賞できるのかはまるで見えてなくて。民にも相談したし、自分の中でも桃の国らしい戦術や向き合い方を徹底的に問い詰めました。そしたらやっぱり民ひとりひとりの身になって考えることしかないってことに行き着いたんです。

だからいま以上に民のことを知って、もっと深く理解するために、ひとりひとりの特徴をプロフィール帳にまとめてみたり、個別の会話を深めてみたりしました。よく驚かれるのですが、配信でも民それぞれとの一対一の会話を同時並行で進められるんですよね。何気ない日常会話を中心に、嬉しい出来事はもちろん何か辛いことがあれば愚痴も聞くし、みんなでお酒を飲んで騒ぐだけの日だってある。民のメンタルケアも姫の重要な務めだと思っているし、みんなには桃の国で気持ちよく過ごしてほしいんですよね。

配信でも「どうすればみんながコメントしやすいか」ってことを意識しています。配信はトークじゃなくて会話だといったのもそこなのですが、ライバーが一方的におもしろいネタを披露するだけだと「へぇそうなんだ、おもしろいね」で終わってしまう。かといって次々と質問を投げかけてみても一通り回答したら終わりだし、聞かれる方も飽きてくる。コメントが続かないんですよね。

だから初見の方でもコメントしやすいよう、最初にプロフィールをチェックして共通の趣味を探したり、興味がありそうな分野の話をしたり。その反応を見て会話の方向を軌道修正していくとかしています。いまやプロフィールが台本って感じですね。

それと初配信やトップバナーチャレンジとか、人が一気に増えるときに起こる「コメマラ」は大量にコメントがもらえる嬉しい状況に見えて、返事を待てない人が知らないうちに退室してしまっていることに気づいて。それからは大切な出会いのチャンスを逃さないよう、コメントはできるかぎり早く拾って待たせないよう心がけています。

私がルール

―とことんリスナーさんに向き合う配信って感じですね。

それでも桃の国では絶対的に私がルールなんです。
枠の方針でなくても、たとえば長く配信を続けていると枠内でリスナー同士がもめることがあります。そういうとき「自分は関係ないからそっちで解決してね」ではなく、枠主としてちゃんとさばくこと。リスナーだって枠主には迷惑をかけたくないはずだし、それを承知であえてライバーの目の前でもめているのは、ちゃんと見てジャッジしてほしいってことだと思うから。「それは君が正しい」「ここではこっちが正解」って、自枠のことはすべて枠主の選択で決めて、守るべきものを守ること。

何かあればすぐ民に相談していろんな意見を聞く私だけれど、最終ジャッジをリスナーにゆだねることはしません。問題発言やマナー違反する人についての判断も私。桃の国の自治を乱さず、悪い影響を広げないために、民が迷わず安心して過ごせるように、私というルールで白黒はっきりさせてうやむやにしないことも常に心がけています。

IRIAMのプロフィールで枠のマナーに関して強めに言っているのもその一環なんです。
大切なわが民が嫌な思いをするような人には来てほしくないから。

悪意のあるコメントは言うまでもなく、まったく応援するつもりもないのに連続コメントをして場を荒らすような人。たとえるなら、このあと別のお店で食事をする予定なのに、その前にふらりと立ち寄っては片っ端から試食して、ごちそうさまも言わずに出ていく。しかも確信犯で何度も繰り返す困った人がいる世の中なので(笑)。

プロフィール内だけだと文字制限もあってなかなか真意が伝わりにくいのですが、たとえ厳しい言い方になったとしても、民のみんなが日々の配信を気持ちよく楽しめることを優先したいなと。あ、でも初見さんや配信に慣れていない人は国を挙げて歓迎して、わからないことはみんなでやさしく丁寧に教えますので、安心して入国してくださいね!

やさしい民の大きな力

―厳しいようでいて、民ファーストのとてもやさしいルールですね。

やさしいのは民の方です。民にはいつも本当に助けてもらっているので。
それはギフトだけの話じゃなくて、華宮ももかと同じ目線で、同じものをめざして一緒にがんばってくれる、心強い仲間としての応援すべてにおいて、です。

民とよく話して、みんなのことをどんどん知っていくうちに、企画が得意だったりイラストがプロ並みだったり、仕事で動画編集をやってたり。桃の国にはいろんな特技や技術を持った民がいることがわかってきて。「だったらこんなこともお願いできたりするの?」って聞くと「桃の国の役に立てるなら喜んでやるよ」って快く協力してくれる。ほんとやさしい民ばかりで、ひとりひとりが共に国を背負ってくれている「同志」なんですよね。

だからというわけではないですが、いま桃の国には一般的にいわれる「返礼品」は存在しないんです。当初はお礼にオリジナルグッズをつくって渡してたんですけど、なかなか大変な作業なんですよね。内容やデザインを考えて、データ入稿して、発送して。その時間でもっと配信できるのになって。ライバーの負荷はともかく、本当にリスナーのためになってるのかなって。私はできれば民とは「これをやるからギフトをください」「それが欲しいからギフトをあげる」という、こっちがやってんだからそっちもやってくれ、ではないところでつながりたい。それで民に意見を求めたんです。

聞いてみたら「ギフトじゃない応援やお礼品じゃない満足感を大事にできる枠がいい」って、みんな同じ考えでした。だからといって、どうしても感謝したいという場合はもちろんやるし、お礼や感謝はこれまで以上に言葉にして伝える。ついてきてよかった、これからもついていきたいと思ってもらえるように、常に現状を見直してよりよい配信ができるようブラッシュアップに努めています。

形じゃない心の絆が深まったことで、実際に桃の国が強くなった実感もあります。決してこれが正解だとは言わないけれど、お礼品が大変で悩んでいる方も多そうなので、一例として参考になれば嬉しいです。

リスナーと築いていくミライ

―既成概念にとらわれない。それもまたすてきなルールですね。

民の協力のおかげで近々YouTubeなどでも動画を公開できそうで、今後そこで出合えるたくさんの人をIRIAMに誘導したいねと皆で計画中なんです。
IRIAM内でもイベントで1位をとってみたいし、フォロワー数1万人突破とか、民とめざす細かな目標はいっぱいあるし、国が一丸となって達成していきたいと思います。

―頼もしいかぎりです。それでは最後にライバーをめざそうとされている方にメッセージをいただけますか。

私はIRIAMでしか配信経験がないのですが、そんな不慣れなライバーにもとてもやさしい、安全に守られた空間というイメージがあります。初めてでも意外と気軽に、配信ボタンさえ押せば割と簡単にできるんだよってことを伝えたいです。

何度も言いますが、IRIAMの配信はトークじゃなくて会話なので。「何かしゃべらなきゃ!」じゃなく、リスナーさんが自分からしゃべりたくなるような雰囲気づくりが大切です。共感しやすそうな話題を振ったり、名前の由来を聞いたりするだけでも会話のきっかけはつかめる。話のタネはリスナーさんのプロフィールの中にきっとあるから大丈夫。プロフィールに書かれていることを台本にしながら、相手の話をよく聞いて、自由におしゃべりを楽しんでみてください。

そして桃の民のみんな、頼りにしてます! これからも一緒にがんばろうね!

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