INTERVIEW


甘沖とゆAmaoki Toyu

魔界の海出身、人びとの幸せを祈るアマクサクラゲ。ふんわりとした甘々な魅力と慈しみ深い雑談でリスナーを包み込む配信は、まるで「水族館」のような癒しスポットと化している。2022年7月デビュー。

ふわりゆらり、穏やかなリズムで水中をたゆたうクラゲは私たちに何ともいえない癒しをくれる。甘沖とゆの甘くやわらかな声や語りも同様、聞いているうちにふと体の余計な力が抜け、いつしか気持ちも落ち着いていく。
しかし彼女はただやさしく包み込むばかりでなく、ときには厳しさすら感じさせる、ぶれない強さも持ち合わせている。そんな〝骨のある〟クラゲ・甘沖とゆの不思議な魅力をとくとご鑑賞あれ。

リモートエンタメが叶う時代

―それではライバーになろうと思われたきっかけからお伺いできますか。

さかのぼるとかなり昔の話になるのですが、ヒトとして生まれたときからボク、体が弱くて病院に通う日も多かったんです。それでも学校は皆勤賞だったのだけれど、中学に入ってはじめて長期入院しなければならなくなって。そのとき、音楽や本、漫画やアニメ、ミュージカルといったコンテンツに元気をもらえたんです。一対一で向き合って、直接言葉をかけてもらったわけでもないのに、こんなにエネルギーがもらえるのってすごい。自分もいつしか発信者側として、誰かの力になりたいなって思ったんです。

それからだいぶ経って学生時代にまた入院したとき、友だちが「とゆちゃんが好きそう」だと教えてくれたのがVtuberの存在でした。エンタメ性はもちろんですが、配信コンテンツが仕事になる時代が来たんだって素直に感動しました。

それですぐに自分もやってみたいと思ったわけではないのですが、ずっとどこか頭の片隅には残っていたんです。Vtuberだったらほかのコンテンツと違って「現場」に行かなくても、家から遠隔でできるよね? 体が資本と言われるエンタメ世界にあって、これなら体が弱くてもできるよね? って希望が持てたのも大きかったですね。

自らの価値を諦めない

―なるほど、そういう背景があったのですね。

もうひとつはボク、昔から教会に通っていたこともあって「人の生死」についてよく考える子どもでした。高じて、学生時代には学問として「人が生きていく価値」や「生かされる意味」を追究したり、心のケアについて分析したり、いろんなことを学びながら「自分」というものについてひたすら考え続けていました。

それがある日、自身の生き方にふと違和感を覚えたんです。これまでは体の弱さを理由にいろんなことを諦めてきました。どうせ無理だ、迷惑をかけるから最初からやめておこうみたいに、傷つくことを恐れて事前にセーブする癖がついてしまって。それでいて、あのとき違う道を選んでいたらと夢想したり後悔したりすることも多かった。

そんな自分の意思を自ら消し続けるような生き方が嫌になって、ある日突然、これまで諦めてきたものに挑戦してみよう。やってできなくてもかまわない。ここで諦めてまた数年後に悔むくらいなら、いまとにかく動いてみようと思い立ちました。

そんなとき、頭によぎったのがVtuberとしての活動で。体が弱くても周りに迷惑をかけず、自宅でできる配信コンテンツならばと、まずはとあるVtuberオーディションで勝ち進んでLive2Dになることを目標に挑戦しました。それがこの世界に飛び込んだきっかけです。

目標を失い 漂流するクラゲ

―自ら引き寄せた転機ですね。それで実際に配信をされてみていかがでしたか?

最初は恐る恐るでした。それでも何人かは来てくれて、とりあえず話せることを「きょうのテーマは○○で!」みたいな感じでしゃべりつつ、逆にみなさんから配信についていろいろ教わるような日々でした。

オーディションは当初の目標には至らずでしたが、それ以前に世の中には自分も含めてVtuber予備軍がごまんといることにどこか圧倒されてしまって。さらに体調を配慮しながら仕事と配信を続けられるか悩ましかったのと、イベント期間が落ち着くとリスナー数がぐっと減ってしまったこともあって、余計に不安を覚えたんですね。

あと、この先自分がどこで満足すればよいのか。誰かのためになっているとか、そもそもの活動の意義や続ける意味がぼんやりしていて、ふんばりがきかなくもなっていました。

一方で、配信に誰も来ないってことは一度もなくて。やめないで続けなよって言ってくださる方や、声が好きだって言ってくれる人たちもいて、そういう人たちがいるかぎりは配信を続けたい気持ちもあったんです。

運命的な出会い

―それで「続ける」という選択をされたのですね?

オーディション期間中に仲良くなったライバーさんたちが一層輝いているのを見て、触発されたんですよね。ここで諦めたり投げ出したりしたら、これまでと何ら変わらないって。
ただ活動を続けるにはやはり明確な目標がほしくて。もし事務所に所属できて、組織に貢献するなどの目的があれば続けやすいんじゃないかと考えたんです。

そんなとき、たまたまいまの事務所のライバー募集記事を見たんです。ボク、もともと水族館が大好きなので、水族館をコンセプトにした事務所という時点でもうここに所属したい! って気持ちになって、すぐ応募しました。

それでいくつかの審査を経て、対面したキャラを見たとき、これは自分だ! って。顔立ちもそうだし、何より声が合う。ボクのままでいけるって直感したし、合格できると最後まで信じて諦めないって自分に誓いました。その覚悟が伝わったのか、無事「甘沖とゆ」としてIRIAMでデビューできることになりました。

って、ここまでの話が無駄に長くなってしまってすみません!

保健室のような場所になりたい

―とんでもない、大事な原点のお話ですから。
それでIRIAMで配信してみて何か変化はありましたか?

配信内容やスタイルが変わったわけではないですが、IRIAMのコミュニティランクや公式イベントなどのしくみは自分にとても合っているなと感じました。

このタイミングでランクを上げたいとか、このイベントを走りたいとか、具体的な目標が立てやすいんですよね。気になることはひたすらノートに書き出して、計画とずれたらすぐにリスナーさんと相談する。少し先を見据えながら一緒に前へと進める。たくさん応援してもらえて、目標を達成したときはみんなで喜んで。そんな日々が最高に幸せなんです。

ボクはライバーとして得意分野があるわけではなくて、歌がめちゃくちゃうまいわけでもイラストが描けるわけでもないし、動画編集スキルもない。基本雑談なんですね。そんなボクが配信のなかでつくり上げたいのは「保健室」や「水族館」みたいな空間で、来るだけでどこかホッとできる場所。穏やかな気持ちでくつろげる場所になれればと思っています。

ただみんなが評価してくれる「甘沖とゆ」の魅力や良さをできるかぎり生かして成長していきたいし、みんなの応援や想いにもきちんとお返ししたい。それで特典やグッズもいろいろ考えるのですが、みんな特典ありきでギフトを贈ってくれるわけじゃないんですよね。

実際、いつも「特典なんてなくてもいい。ただ応援したいだけだよ」と言ってくれる。でもだからこそ、リスナーさんたちにとって何がいちばんの幸せで、それを枠のなかでどう実現していくかを永遠の課題として、日々試行錯誤しながら配信を続けています。

弱い自分を隠さない

―配信のなかで大事にしていること、気をつけられていることなどはありますか?

ボク、自分が弱いことを隠さないんです。ライバーさんには常に明るく元気でいることを心がけて、ネガティブな発言はしないって方も多いですよね? でもボクは逆にありのままを見せている。暗い部分もなるべく隠さないようにしています。

自分が病気を持っていることも話しています。決してその辛さや悩みを聞いてもらいたいのではなく、その体験が前提としてあるからこそいまのボクがあることや、弱いなりに無力なりに諦めず、やれることはやりたいってことを伝えています。
中には「弱さで人を釣るな」って非難する人もいるけれど、本人は弱さを売りにしているわけでも、売りになるとも思ってないです。

実際のところ病気に関係なく、ボク自身のめんどくさい性格や「かまってちゃん」なところとか、ダメダメな一面もそのまま見せていますし。でもそれも含めて好きだよと言ってくれる人やダメな自分を認めてくれる人がいる。

またそうした光景を見て、同じように〝弱い部分〟を抱えているリスナーさんが自己肯定感や勇気を持てたり、気持ちが楽になったりすることも事実なんですよね。それが嬉しいし、ボクが配信するひとつの意味が見出せた。エンタメにこだわらなくていいんだ、自分はこのスタイルで行こうって決めました。

配信って、どこか種をまいているような気分なんですね。いま話したことがすぐ何かに役立つとかではなくて、聞いた人がいつか何かの壁に直面したときに「そういえば誰かがこんなこと言ってたな」とかでいい。リスナーさんに限らず、後輩や仲間、さらにどこかの誰かのために、いつか何かの支えになればいいなって思いながら日々発信しています。

楽しく配信を続けるために
ボクが決断したこと

―初配信から一年ほど経って、何か変化はありました?

トップバナーチャレンジや「IRIAM Birthday」などでの上位入賞を経て、ありがたいことに「甘沖とゆ」の認知度も高くなってきました。Sランクにも到達できたり、たくさんのリスナーさんに応援していただいたりしながら、いろんな感動体験をさせてもらっています。

一方で、仲良くなったライバーさんの枠を応援したくても時間が取れなかったり、後輩に自分と同じような体験をさせたくても十分なフォローができなかったり。リスナー活動や後輩のサポートがどうしてもおろそかになって、悩ましくもありました。

何より、Sランク帯キープをめざすあまり、ボクのことが好きで来てくれているのにギフトを贈らないと居づらいような空気になったり、自分もリスナーさんも疲弊してヒリヒリしたりすることがいたたまれなくなってきたんです。リスナーさんのためにと言いながら、自分は本当にリスナーさんを大事にできているの? お互い信頼できている? こんなの「保健室」じゃないよねって迷いが生じて以来、自問自答を繰り返していました。

それであるとき「ランクキープにこだわるのはやめよう!」と踏み切ったんです。みんなが誇れる、応援したいライバーでありたいという自分なりの基準は担保しながらも、Sランクにはこだわらないと決めた途端、自分もリスナーさんもどこか肩の荷が下りて楽になれた。
嬉しいことに、このスタイルになってから新しい方が前よりもっと入ってきてくれるようになりました。その人たちがこの枠が楽しいと言ってくれたりバッジまでとってくれたり、いろんな人から居心地がよくなったと言ってもらえるようにもなりました。前に進むペースは落ちても、前より力強い一歩を楽しんで踏み出すことができている感じですね。

とはいえ定時の配信もなく、配信の8割はご飯を食べているようなまったり枠で、ライバーとして本当に大丈夫なのかとは常々疑問視しているのですが(笑)。リスナーさんが毎日来られる・来たいと思って、ボクを求めてくれているうちはいいのかなって。ボクが笑顔で元気に、ときには疲れたよって吐露しながらでも、毎日ライバーを楽しく続けていくことがボクが最低限できることなのかなって思いながら配信し続けています。

―こだわるところとそぎ落とすところを経験や体感のなかで選びながら、自分らしい配信スタイルを見つけていらっしゃるのですね。

支えてくれるみなさんのおかげです。自己実現というのか、この一年で本当にたくさんの夢を叶えてもらいました。
Vtuberをめざしたころはファンアートを描いてもらえるようになることが夢でした。それから好きなイラストレーターさんに描いてもらうとか、自分のグッズをつくれること。さらにそのグッズを誰かが持っていてくれるとか、思い描いたひとつひとつの夢が叶えられていきました。

「IRIAM VISION GRAND PRIX」という大型ビジョン広告に掲載されるイベントに入賞して、多くの人が行き来する街なかの巨大なサイネージに自分が映し出されるなんて、もはや奇跡のような夢物語でした。それでも一緒に走ったみんなが「甘沖とゆ」を応援していることを誇れるイベントだと思ったんです。それにあんなに大きなメディアで、これまで直接伝えきれなかったみんなへの感謝や愛しているという想いを伝えられる機会なんて願って得られるものではないし、ボク自身もめちゃくちゃがんばりたかった。みんなからもらった応援に見合うライバーとして成長できているかどうかはわからないけれど、ボクが楽しんでいる姿や笑顔で活動している様子をそんなすごい場所から発信することで、リスナーさんはもちろん、周りで支えてくださる方々へのせめてもの恩返しになればと願っています。

ありがたいことに、いろんな案件をいただく機会も増えてきました。ライバーとして成長できているという手応えにもなるし、何よりリスナーさんにその報告をする瞬間が幸せで、たまらなく嬉しい。このイルミナリー掲載も、みんなに報告できる日が楽しみでしかたなくて、いまからニマニマしてしまいます(笑)。
改めてライバーとして活動できてよかったと思うし、ライバーとしての成長を共に喜び、応援してよかったと思ってもらえるいまが本当に幸せだなって感謝が尽きません。

―そうしたとゆさんの姿や在り方こそが、これからライバーをめざそうとしている方への何よりのアドバイスや〝啓示〟になると思います。

そうだと嬉しいですね。
ライバーに明確な正解なんてないし、それぞれが思い描く理想像も導き出せる答えも状況に応じていくらでも変動するものだから。その都度「自分は、どうしたい? どうなりたい?」って問い続けてほしい。問い続ければ自分にとって絶対に譲れないものや守りたいもの、軸となる部分に気づく瞬間がきっとある。だから絶対に自ら諦めないでほしいです。

ボク自身、いまだに日々手探りで、めざす方向も常に変化している。ただ「誰かの幸せを願う配信を続ける」という根幹部分はぶれずに貫きたい。みんなと過ごせる時間、その何気ない日常にある幸せの積み重ねがあって、いまのボクがあることを決して忘れないし「甘沖とゆ」で在り続けることを絶対に諦めない。みんなへの感謝を忘れず、少しでも恩返しができるよう、そして応援したことを誇ってもらえるように活動し続けたいと思います。

きょうはそうした感謝をいろんな言葉で伝えることができて本当に嬉しいです。貴重な機会をありがとうございました!

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