自分を表現できる場所

―まずは、配信を始められたきっかけをお話しいただけますか?
コロナ禍で気軽に出かけたり人と会ったりできなくなった時期、家でYouTubeを見ていて、Vtuberという存在を知りました。
「絵が動くんだ!」って驚いたのと同時に、見る人の心の隙間を埋めたり、人と人とをつなげたりして、誰かの背中を押せるVtuberやそれを実現する配信の世界ってすごいなって。
あと、狐森は昔から引っ込み思案なんですけど、その反面、心のなかでは自分を表現できる場所がどこかにないかなって、ずっと探していたんですよね。それが「ここならできるんじゃないか」みたいな感覚もありました。
それで、まずは機材や専門知識がなくても配信できる場所を探して、とりあえず目についた別のプラットフォームで始めてみたら、初日に事務所の方からお声がけをいただいて。
もちろん最初は警戒したけれど、でもこんなチャンスはめったにないよなって。当時創業間もない事務所で、一緒にがんばれる仲間たちと新たなスタートを切れることにやる気も湧いてきて「よっしゃ入ろう!」って割と即決でしたね。
そこからは、3カ月後の初配信に向けて、とにかく「知ってもらう」ことと、その先にあるトップバナーチャレンジでの上位15位を目標に、できる準備を進めていきました。
特にオリジナルグッズは早く作りたくって、デビュー前からトップバナーチャレンジ用のお礼品のアイコンリングやヘッダー、オリジナル背景やグッズのデザインなんかをわくわくしながら考えてました。
X大作戦
―驚くほど積極的に行動されていて、とても引っ込み思案でいらっしゃるようには見えませんが(笑)。
みんなと事務所を盛り上げていくんだとか、すでについてきてくれていたファンのためにとか思うと力がみなぎってきて、想像以上にがんばれちゃうみたいな(笑)。
でも、やっぱり枠回りだけは大変でした。普段は引っ込み思案が勝つ狐森には、初めての枠に入っていくのがいまだに難しいんですよね。
だからXを活用して、毎朝の「おはようポスト」にリプをくれた方の枠に行くとか、その枠で知り合えたライバーさんのところへ行ってみるとか、ちょっとしたコネクションをきっかけに、徐々に打ち解けてなじむ作戦で何とか克服しています。
あとは狐森の強みでもあるイラストですね。自分で描いた絵をこまめにアップして「狐森はこういうことができるんだよ」って発信したり、お姿を見せられない期間でも楽しんでもらえそうな企画を考えたり、できるかぎりの工夫を積み重ねるなかでどんどんフォロワーが増えていきました。
実際、初配信では「Xでやってる企画や運用法がおもしろくて来たよ」って方がとても多かったので、ますます手ごたえを感じたし、いまでもXでの発信はライバー活動の大事な部分を担っています。
ガチ家族の強力サポート
―綿密な準備を重ねられた結果、初配信は順調でした? トップバナーチャレンジでも見事に目標を達成されましたよね。
それだけ準備していても不安はあったし、いざ配信となるとボタン操作にあたふたするとか、プロフィールどおり「ぽん」を連発してました。でも、いつだってリスナーさんたちがやさしくフォローしてくれて。
結果、想像の10倍を超える人たちが遊びに来て、楽しんでもらえたことが大きな手ごたえになったし、「ここでがんばれるんじゃないか」って勇気ももらえました。
そんな勢いもあって、トップバナーチャレンジは本当は1位をとりたかったし、とりたいって周りにも宣言してました。
意地悪なリスナーさんがわざわざ枠に来て「あなたに1位なんて無理だよ」とか心無いことばを言われたこともあったけれど、それ以上に親や家族から「やるなら上をめざさないでどうするの!」って励まされて。リスナーさんや事務所にも見守られて、大好きなイラストレーターさんに描いてもらったすてきな立ち絵もある。自分を信じてがんばるしかないって、腹をくくった感じですね。
結果、狐森の思いにみんなが応えてくれて、練りに練ったオリジナルグッズもものすごく喜んでもらえたし、トップバナーチャレンジ期間をおそろいのグッズで最後まで一緒に盛り上がれた。デビュー前から憧れていたシチュエーションが実現しました。
―ご家族のみなさまは、みやびさんが配信されているのをご存じだったのですね?
ご存じというか、両親や兄弟はしょっちゅう遊びに来てますし、いまや親戚一同にも知れ渡っています(笑)。家族には配信外でも「自分はこういうことをやりたいんだけど、どう思う?」みたいな話はしていて、その都度励ましてくれたり、具体的なアドバイスをくれたり。
なので、狐森の配信や発信には、食べ物の話ほどではないですが、狐森家の話題もよく登場するんですよ。
大家族の狐森家
―トップバナーチャレンジ後、一度配信を休止されたときのことを差し支えない範囲でお話しいただけますか?
配信があまりに楽しすぎて、知らず知らずのうちに無理を重ねていたのと、仕事とも両立しながら長時間配信していたことで、本格的に体調を崩してしまったんです。
気持ちはこのまま続けたい一心だったけれど、手術や入院、長期療養が必要と言われた段階で、まず事務所を退所せざるを得なくなりました。
そのうえ明確な復帰時期もわからずで、もう配信自体もやめるしかないとあきらめかけていたとき、リスナーさんたちが「辞めちゃうなんて悲しいよ。いつまでも待ってるから」と言ってくれて。事務所に属さなくても、個人勢として無理をしない程度の配信でも続けられるんだっていう、新しい選択肢をもらえました。
実際、配信やXでの発信を休止していた10カ月ほどの間、リスナーさんたちが毎日欠かさずファンサーバーで声をかけて、病気で沈みがちな気持ちを励ましながら支え続けてくれました。
でも、それだけ密にコミュニケーションをとっていても、いざ復活するとなると長期のブランクが重くのしかかって、不安でいっぱいでした。でも再開と同時にみんなが本当に戻ってきてくれて、枠の空気がとにかく温かくて。もうほんと家族だなって。
だからファンネームというか、もはやファミリーネームみたいな感じで、みんなを「森の子」と呼ばせてもらって、ここまで4年間、ずっと一緒に楽しい日々を過ごしています。

好きだらけの配信

―ライバー活動に関して、休止の前後で変わったこと、変わらないことを教えてください。
やっぱり体も心も無理をしないこと、ですね。
それは自分をいたわる目的だけじゃなく、森の子たちにとっても。お互いに無理をしない・させない枠づくりを常に心がけています。
イベントの走り方でいうと、そもそも狐森はお祭りやパーティーが大好きなので、楽しいイベントは大歓迎なのですが、毎月走ると体にも負担がかかるし、森の子たちも大変。だから大きなイベントは半年に一回にして、その分みんなで一緒に盛り上がろうねって感じです。
そこでももし狐森のエンジンがかかりすぎて無茶をしそうになっていたら、みんなが早めに注意してセーブしてくれるとか、もはや保護者ですね(笑)。
でも、そんな安心安全のルールや思いやりにあふれた雰囲気のおかげで、狐森の枠は定着率がとても高いです。理由を聞くと、新旧ファン問わず、誰に対しても互いにさりげない気づかいができる枠だとか、初見さんからも居心地がよくて「お尻に根っこが生える枠」なんて言ってもらえることが多くて、ほんとに嬉しいです。
あと、狐森が食べること大好きなので、配信の9割が食べ物の話なんですよ。
「きょう何食べた?」に始まって、ご当地のおいしいもの自慢やおすすめのお土産品、好きなコンビニ商品ランキングとか、IRIAMの「予算ダイス」を使って出た目のお金で、枠で話題になったお菓子を食べてみるだとか、誰でもすぐになじめる話題や企画ばかりだというのも大きいと思います。
変わらずに続けているのは、Xでの発信。こちらでも、イラストを描くのが好き、食べることやお酒が好きって投稿し続けていたら、ラッキーにもそれが多くの方の目に留まって、さまざまなコラボ案件のお話もいただけるようになりました! 日々の積み重ねの大切さを実感しています。
やればできる狐(こ)なんです

―長く続けられているなか、みやびさんご自身の変化や成長についてはいかがでしょう?
デビュー当初は自分のことをうまく表現ができなかったんですが、自分の目標とかやってみたいこととか、思ってることをちゃんと言葉にして伝えないと森の子たちがついてきづらいんだと気づいて。そこからはリーダーシップというのか、みんなを引っ張っていくためにも自分の考えをはっきり言えるようになったし、自信もついてきました。
いきなりできたわけじゃなくて、配信を始める前に「この目標に向けてみんなが一緒に前を向けるようにきょうはこんな話をしよう」みたいなことをノートに書き出したり、伝えたときの反応によって次回の話し方を工夫したり。そうでなくても日々の出来事や森の子たちのちょっとした情報なんかをもはや日記帳のような感じで、初配信からまいにちずっと細かくメモしているノートがもう4冊目です。
あと、自分でできることも増えてきました。
個人勢になって唯一困ったのが、外部委託です。信用のなさからか、なかなか依頼を受けてもらえないことが多いんですよね。でも、だったら狐森がやればいいんだ。自分でできれば、いつでもいくらでも作りたい放題じゃん! なんて思って(笑)。
もともとイラストは描いていましたが、描き続けているうちにスピードや精度が増してきたし、Live2Dもイラストは外部の方に作っていただいているのですが、モデリングは自分で挑戦してます。歌枠用のカラオケ音源なんかも自分で作れるようになりました!
ちなみに音源制作については、音楽関係の仕事をしている兄狐に指導してもらってます。
待ってろ、全生命体!

―リアルご家族も大活躍ですね!(笑)
日々パワーアップされているみやびさんの、今後の目標について聞かせてください。
いつかはSランク帯にたどりつきたいし、狐森オリジナル背景も実装したいし、全国のおいしいものを食べ歩くレポートとかもしてみたい! って、細かな目標はたくさんあるけれど、最終的な野望は「全生命体に狐森みやびを知ってもらうこと」です!
そのためにも、配信に留まらず、いろんな人に存在を知ってもらえるチャンスがあれば積極的に挑戦したいです。
リアルイベントや企業さまとのコラボ案件なんかもそうで、たくさんの方との「はじめまして」の機会としてはもちろん、いろんな事情で配信にこられなくなった森の子たちにも「ひさしぶり!」って、狐森が変わらず元気にがんばってる姿を見て安心してほしいなって。
あと、今年のミラパの「おもいでコラージュ」展示では、ライバーがサインして終わりじゃなく、来た人がメッセージにシールを貼れるしくみがあったじゃないですか。当日来場してくれた森の子たちから「みやびちゃんと一緒に会場を演出してる気分で、すごく楽しかった」と言ってもらえて、狐森もめちゃくちゃ嬉しかったし、今後も森の子たちと一緒に何かを作り上げるみたいな機会を持てればと思ってます。
誰にも無理をさせない枠づくりを
誰にも無理をさせない
枠づくりを
―それでは最後に、ライバーをめざしている方や始めたばかりのみなさんにメッセージをお願いします。
いちばんはやっぱり、狐森自身の経験からも、気負いすぎるなってことですね。
あと、配信の世界で当たり前にいわれる「休めば休むだけリスナー離れが起こる」という定説は、絶対じゃないってこと。リスナーさんと信頼関係を築けてさえいれば、きっと戻ってきてくれるから、疲れたときは無理をせず、しっかり体を休めてほしいです。
それと、自分の体調だけじゃなく、リスナーさんたちの状態も同じように把握しておくこと。
自分が元気だったり浮かれていたりするときほど、リスナーさんが疲れている場合が多いので、日ごろからしっかり目を配って、誰にも無理をさせないような枠づくりをする。
自分の声を聴いて、元気になってもらえるならそれだけでいい。ギフトもいらないからいつでも遊びに来てねって、安心して楽しめる居場所を用意する。これが長続きのコツなのかもしれません。
ほんときれいごとじゃなく、来てくれる人には全員笑顔になってほしいんですよね。だから狐森も、配信中はスマホに向かってずっと笑顔でいるし、いつでもそうあるよう心がけています。
といっても、放っておいても自然と笑顔になっちゃってますけどね。特に食べ物の話をしているときはめちゃくちゃ笑顔です!(笑)
そんな心から楽しい時間を狐森にくれる森の子たちに、最後に一言だけいいですか?
「森の子たち、やったよー! イルミナリーに載ったぞー!」


