いまの自分を変えたい

―配信を始められたきっかけを教えてください。
私、いま所属している事務所でスタッフをやってたんです。あるとき事務所の方から「配信やってみない?」とお声がけいただいたのですが、最初はやる気がないというか、とても自分にはできないってお断りしてました。
しばらくしてもう一度お誘いがあったのが「このままじゃいけない、何か変えなきゃ」と思っていた時期とちょうど重なったことで、試しに事務所の説明会に参加してみたんです。そこでIRIAMで活躍されている先輩方の録画を見て、はじめて配信と出合いました。
すっごく盛り上がってて、ライバーが一人でしゃべっているんだけど、コメントの反応がめちゃくちゃ早くて普通に会話が弾んでるじゃないですか。なんだかおもしろそう! っていう期待感にも背中を押されて、チャレンジしてみることにしたんです。
夢を継ぐ店

―そこからIRIAMで「獏夢見堂」を開店されるまでの経緯を伺えますか?
キャラクターデザインに関しては、普段の自分をベースにして考えました。日頃から浴衣や和服を着ることが多いのでお衣装にも反映して、俳句や歴史が好きなのもそのままキャラに活かしてます。
「獏夢見堂」は、昔祖父がやってたお店がモチーフなんです。魔訶不思議な、けれど作った人の夢や持ち主の愛情が伝わってくるようなものがたくさん置いてあって、毎回ドキドキワクワク探検気分で遊びに行ってました。もうなくなっちゃったんですけど本当に大好きな空間だったので、祖父の遺志を引き継ぐような気持ちで開店しました。
そこからは先輩方の枠に行って、何を準備したらいいのかとか、いろんなアドバイスをもらいました。たとえば「挨拶はよく考えたほうがいいよ」と聞いて、挨拶って何だと思いながら周りの人のを見てみたら、語尾に好きなものを付けてそうだったので、なら「もあい」かなと。私、ずっと前からイースター島のモアイが好きで、いつか本物を見るのが夢なんですね。
でもデビュー後に、いろんな人から「なぜ、もあい?」と聞かれるたび、どうやら違ったみたいだぞと気づいて(笑)。いまは「最愛」と書いて「もあい」なんだよって言い張ってます!
骨は折っても心は折れず!

―初配信は順調でした?
先輩方をはじめ、驚くほどたくさんの方が来てくださって、おかげさまで終始大盛況でした! 10分以上も返事をお待たせする「コメマラ」状態が続いたのですが、みなさんやさしいからずっと待っててくれて、ギフトもいっぱいいただけて。嬉しいとおっかなびっくりとを繰り返しながらいっぱいしゃべっちゃって、何時間という時があっという間に過ぎてました。
そのままの勢いで過ごすなか、デビューからちょうど一週間後に私、諸事情あって足を粉砕骨折してしまったんです。でも当初は「やるからには上をめざそう!」という気持ちにあふれていたので、心は折れることなく配信だけは続けて。むしろ動き回れない分、一日の半分くらい配信してることもありましたね。とにかくトップバナーチャレンジまでは一気に駆け抜けた感じです。
けど本当のスタートは“通常営業”になってから。獏夢見堂として、ここからどうやってリピーター客を増やせるかが肝だと思っていたので。トップバナーチャレンジ期間だけじゃなく、今週はどんなことをするとか、何のイベントに出るとか、今後のスケジュールをきちんと告知するようにしたり、配信のなかでリスナーさんが「こんなのが聞きたい」とふと漏らしたことばをメモしておいて企画化したりもしました。たとえば、私が一食でごはんを3合くらい食べちゃうという話から「獏ウテナが食事をするのをみんなで聞く」企画が誕生しました(笑)。
自分らしい配信のかたち

―通常営業がスタートして、気づけば3年半以上が経つウテナさんですが、その間で何か転機となるような出来事はありましたか?
一度だけ、配信するのがつらくなった時期があります。デビューから順調にコミュニティランクが上がっていって、Sランク帯に到達したときはめちゃくちゃ嬉しかったんですけど、それがいつしか「キープしなきゃいけない!」って気持ちにすり替わってて。あるとき、近頃なんだかリスナーさんたちとの会話をちゃんと楽しめていないぞって、ふと気づいたんです。本当にやりたいことが全然できてないじゃん! って。
もうランクを気にするのは辞めよう、リスナーさんと楽しく枠をつくることを大事にしようって「初心」の方向にぐんと舵を切って。みんなにもいっぱい応援してもらった感謝を伝えながら、しばらくはセーブしてねってお願いをして、じわじわスピードダウンしていきました。
そうして何カ月か経ったころ、配信していてこれまでにない心地よさを覚えた日があって。「獏夢見堂の理想像はこれだぁ」ってしみじみ感じた瞬間というか、自分の求めていた配信のかたちやコミュニティのあり方が目の前に見えた気がしたんです。
そこからは枠回りもしなくなりました。枠外でつながった人たちとだけ通じるような話をしてリスナーさんを置き去りにしたくなかったし、ライバー間でバチバチしちゃうのも怖くて。いまでは一部の長いつきあいのある方だけに絞って、頻度も控えめにしてと、まるで鎖国状態なのですが(笑)、お客さまにとって居心地よい空間を提供し続けること以上に大事なことはないので。
まいにち配信がくれたもの
―リスナーさんやコミュニティを大切にされていることが伝わってきます。一方で、鎖国状態では新規のお客さまを呼び込むのが難しくないですか?
そうなんですけど、初心者向け配信は常連のお客さまを戸惑わせてしまいそうでやってないです。でもIRIAMの「初見グリーティング応援キャンペーン」をきっかけに、たくさんの方が来店してくださいました! 初見の皆さまにはお店について軽く紹介して、もしお気に召せばそのまま気軽に好きなだけ楽しんでいってくださいね。次回からはあなたも常連さんだからね、ってご案内してます(笑)。
あと工夫としては、目を引くサムネイルづくりですかね。祖父のお店にあったゴリラの置物とか、謎のキノコとか、たまに突拍子のないモチーフを登場させてはマニアックなお客さまを引き寄せることに成功しています。
それでも、お店を続けていられるのは常連さんたちのおかげなので。目の前のリスナーさんがいつでも好きなときに店に来て、いつもどおり楽しめるように、まいにち営業し続けること。先日も、3年ぶりにふらっと来店してくださった方が「変わってなくて落ち着くわ」といってくれて。嬉しかったし、これからもそういう獏夢見堂でありたいと思います。
というか、もはや配信しないと自分が落ち着かないですね。最初は意地で続けてたんですけど、3年半以上ともなると歯磨きくらいの感覚で習慣化しちゃってます。
けど、それがいまの自分を支えてくれているというか、しゃべりも上手じゃないし、目立つ個性や秀でた特技もない私が唯一誇れる拠り所になっていて。去年のミライトパーティで「まいにち配信2024」部門の表彰者のなかに自分の名前があるのを見たときは、それを認めてもらえた気がしたんです。一層モチベーションが上がりました!

モアイと俳句と明治村

―獏夢見堂の店内は日々さまざまな夢でいっぱいだと思われますが、ウテナさんご自身の夢や目標というと?
うーん、やっぱりいちばんは「このまま続けていくこと」です。ほんと何の芸もなくて、ただ騒がしいだけの枠なんですけど、悩んだり落ち込んだりしていた方が「ここにいたら気が紛れた」とか「楽しかった、ありがとう」って言ってもらえたとき、続けていてよかったってしみじみ思います。
もう一つあるのが「自分の好きなものをもっとたくさんの人に好きになってもらいたい」ってことですね。
俳句やモアイ、それと明治村! もう何十年と通っていて、本当に大好きなんです。「IRIAM×明治村 バーチャルアンバサダー」コラボでは、イベントで勝ちたいというより、とにかく明治村のお役に立ちたい一心で、これを機に人がいっぱい来てくれたら施設を修繕できるとか、やる気満々で参加しました。入賞はできなかったんですけど、終わってからほかのライバーさんを応援されていた方が「明治村のおもしろいところを教えて」って来てくれたり、リスナーさんたちが遊びに行ってレポートしてくれたりして、ものすごく幸せでした。
目標としてはリアルイベントですかね。事務所主催のイベントに参加して以来、リスナーさんたちからまたやってほしいという声が多いのと、大きすぎる目標ですがミライトパーティのステージ出演もめざしてます。いや、絶対無理だと思ってはいるのですが、もしですよ、もしもミライトステージに出られたらリスナーさんと一緒に歌いたいです! あと普段つきあいのないライバーさんとのやりとりも楽しそうだし、そのときは全力で自分にできることをお届けしたいと思います!
配信歴4年目の新人より
―ウテナさんらしいステキな夢ですし、令和にいきいきとよみがえった獏夢見堂を見て、きっとおじいさまも喜んでいらっしゃるでしょうね。
それでは最後に、長く配信を続けていらっしゃる先輩として、ライバーをめざされている方や少し悩みを抱えていらっしゃるような方にメッセージをいただけますか?
そんなそんな、先輩だなんてとんでもない! 年数は確かにベテラン領域かもですが、自身はまだまだ新人感覚でやっているので。
だからありきたりのことしか言えないのですが、あまり思い詰めてほしくないってことですかね。IRIAMは声だけだって思われがちなんですけど、声って思ってる以上に情報量が多くて。自分では落ち込んでたりイライラしたりするのをうまくごまかしたつもりでも、聞いてる側には言葉の端々とか声のトーンとか、細かな部分でしっかり伝わってしまうものだから。相手に対しても、自分の気持ちも無理してごまかそうとしないでほしい。
私もそうでしたが、コミュニティランクとか人間関係で悩んでるときって、もうお先真っ暗みたいに感じちゃうんですよね。でも、そんなときは一度立ち止まって、それまでの道のりを振り返ってみてほしい。デビューしてからの日々を思い返して、どこが楽しかった? どこがつらかった? って一つひとつたどっていって、そこから自分が心底楽しいと思える方向に舵を切っていけば、いつか必ず浮上できると思うので。
というか、私はそれをやったから「いま」があります。
あとは、ぜんぶリスナーさんのおかげですね。肝心なところでポンしちゃう私をいつもやさしく、大きな愛を持って見守ってくれているリスナーさんに“年中無休”で支えてもらってます。面と向かっては恥ずかしくて絶対言えないので、ここで感謝を伝え......たいと思ったのですが、口に出すのはやっぱり照れくさいので続きは下のイラストで!(笑)


