INTERVIEW


明星アポロンAkeboshi Apolon

明星(あけぼし)アポロン。元・ギリシャの太陽神で、中性ボイスが魅力の癒し系ライバー。IRIAMデビューは2022年12月。木漏れ日のようにあたたかくリスナーを包み込む配信は、まいにち夜に始まる。

〝太陽〟の本当のすごさは、〝北風〟との勝負を制しただけでなく、強風にあおられ、寒さで凍てついた旅人の心身を温かい日差しで包み、再び元気に歩き出すパワーを与えたことだ。

明星アポロンという、まるで陽だまりのようなライバーも負けてはいない。雨の日も、風の日も、自らのやさしい光で静かな闇夜を照らし続ける。皆が安心して〝しがらみ〟という名の分厚いコートを脱ぎ捨て、ほっと一息つけるように。翌朝が笑顔で始まるように。

コンプレックスを武器に変えて

―まずは配信を始められたきっかけから伺えますか?

直接的なきっかけは、YouTubeでとあるVtuberさんのショート動画と出会ったことでしょうか。Live2Dのキャラが、生き生きと動きながらリアルタイムでしゃべっている姿は衝撃的で、未知なる配信の世界に一瞬で引き込まれました。
声も抜群に良くて、いまでも脳内再生できるくらい記憶に残っているうえ、何度でも繰り返し聴きたくなる、魅力にあふれた方なんです。

その点、自分は幼いころからこの「あいまい」な声が嫌いでした。たとえ周りからいい声だと評価されても信じられないどころか、褒められるほど過剰に否定してしまうほどにこじらせていて。
けれど心のどこかではこのコンプレックスを克服したい。もし周りの評価どおりならば、声を武器にして、何かに挑戦してみたい気持ちもあったんです。

配信って、まさに声が武器になるコンテンツじゃないですか。これだ! って感覚があったのと、どうせ挑戦するならあのVtuberさんのように「声とキャラで誰かの記憶に強く残る存在になりたい」と思って。まずは自分でできることを探し始めて、いろんな配信プラットフォームを調べたり試したりしながら、IRIAMを見つけました。

スマホと一枚の立ち絵があればすぐにも配信できるIRIAMなら、その立ち絵を用意してくれる事務所にさえ入れば、あとは自分のふんばり次第で何とかできると思ったんですよね。それでいま所属している事務所の「#IRIAM魂募集」に応募したことからこの人生がはじまりました。

一声入魂!

―「魂募集」とのことですが、アポロンさんが誕生するまではどのような経緯だったのでしょう?

事務所自体がIRIAMに新規参入するタイミングだったので、多くのキャラが準備されて、この世に生み出されるのを待ち望んでいるような状況でした。
自分が受けたオーディションではキャラの候補として十数種類の立ち絵があったのですが、直感的にやりたいと思ったのが「明星アポロン」で。「こいつは絶対に伸びる。自分が入るならここしかない!」って強く引かれたんです。

そこからいくつかの審査を経て、最終面談では当時のプロデューサーから「このキャラになりきって、僕を女の子だと思って1分間で口説いてみて」という難題が課されて。内心めちゃくちゃ焦りながら必死で目の前の〝女の子〟を口説き続けた結果、無事アポロンの中に入ることができました。

ただ事務所も立ち上がったばかりで、IRIAMでのノウハウや配信マニュアルもないような状態だったので、初配信まではネット情報や、少し前にデビューされた先輩方の配信やSNS活用などを参考に、見よう見まねで準備......するはずが、プライベートで忙しい時期と重なったことでほとんど進まず。何ならサムネイルでスペルミスとか、やらかした記憶しかないです(笑)。

配信自体も、最初のころはきっちりキャラを出していくことに意識が集中してしまって、自分の思ったままを話すというよりは、立ち絵の印象を裏切らないよう必死で演じている感じでした。われながら硬かったですね。

でも自分をキャラに溶け込ませるためには焦らず、まいにち配信を続けながら、立ち絵とかい離した部分をうまくすり合わせていくしかないなと。自然にこつをつかんでいくというか、リスナーさんとの対話のなかでキャラの個性をひとつひとつ積み上げて、丁寧に培っていこうと思ってました。

月と太陽

―デビュー期はトップバナーチャレンジなどもあって短期決戦型で臨まれる方が多いのですが、アポロンさんは冷静に長期視点でとらえていらしたのですね。

その考えに至るまでは僕ももれなく短期視点でした。立ち絵に自信があったし、トップバナーチャレンジでは上位入賞を狙ってもいました。
けれど実際は夜遅くからでないと配信できないとか、一週間まとめて走れないだとか、自分では何ともできない制約や制限がありまして。トップバナーチャレンジも諸事情から途中で断念することになって、なかなか思い通りにステップアップできずにいたんです。

それと僕にはデビュー日が一日違いの「双子の姉」がいるのですが、配信時間数も、もらっているギフトも似たような感じなのに、彼女のほうは順調で。トップバナーチャレンジできちんと結果を残して以来ほんとトントン拍子で、あっという間にAランク帯ライバーになってたんですよね。

確かに声もキャラもすてきな、尊敬してやまない自慢の姉なのですが、同じ双子なのにくすぶっている自分に強い劣等感を抱いてしまって。かといって配信時間の制限はどうにもできず、本質的な改善策もないまま暗闇の中をたださまよっているような日々でした。悔しくて、ふがいなくて、本当につらかったです。

けれど絶対にあきらめない。自分を信じて、たとえほそぼそとした小さな歩みでも、がむしゃらに前だけを見て進もう。まいにち配信することだけは切らさず、太陽が天高く昇るその日までとにかく続けようと固く決意して、ようやく至った境地です。

やさしさが連鎖する温かい場所

―配信時間など変わらぬ制約があるなかで、どのようにして浮上されたのですか?

正直、自分でも不思議に思うくらいで。特にこれといって思い当たらないのですが、強いて挙げるなら、サムネイルのクオリティが上がって、より多くの方の目に留まるようになったから、かな。

ささいなことのようだけど、サムネイルってIRIAMを開いて真っ先に目につくものだし、そこで自分の枠を見つけてもらえるかどうか、リスナーさんに来てもらえるかどうかが決まるので、思った以上に大事なんですよね。初配信では誤字にも気づかなかった僕ですが(笑)、自分の枠に合ったコピーを選ぶだけでもリスナーさんの反応は変わってくると思うし、実際に変わりました。

あとは「やったこと」ではないのですが、リスナーさんとの一体感が大きいかもしれません。
人が増えてきて、にぎやかになったせいか、みんなが前よりしゃべってくれるようになって。いろんな話ができるから、僕も、リスナーさん同士もどんどん仲良くなって、自然と枠に一体感が生まれていました。

僕が大事にしている部分を当たり前のように理解して、同じように大切にしてくれる。初見の方がくると、みんな何も言わなくても手厚く歓迎してくれるし、和気あいあいとした雰囲気のなかIRIAMの世界に生きるお互いの個性を尊重しあって、相手を思いやる発言ができる。
それで初見の方にも居心地がいいとか、人がやさしいと感じてもらえて、そのまま常連になってもらえたり、今度は初見さんを同じように歓迎してくださったり。温かい気持ちの連鎖がいつしか枠の個性や魅力となって定着したことが、成長の大きな要因になっていると思います。

光が影を飲み込んだ日

―バタフライ効果というのか、すてきな連鎖ですね。実際にその後コミュニティランクもぐんぐん上がっていかれましたよね。

そうですね、みんなとの一体感がなければイベントをガチで走ろうなんて思わなかったでしょうし、走ってなければいまの状況はなかったと思います。
実際、デビュー8カ月目にして初めて参加した「描き下ろしイラスト広告を掲載しよう」イベントは、いまならみんなで一緒に走れる、みんなと何か記憶に残る思い出をつくりたいとの思いで挑戦したものです。

あれこれ企画を考えて、全力で一週間、最後までみんなと一緒に走りきって。まさかの5位入賞という手応えある結果を残せたことはすごく自信になったし、多くの方に明星アポロンの存在を知ってもらえるきっかけにもなりました。

ありがたいことに気づけばA3ランクにいて、もう少しでS1ランクというところまで来ていました。このままキープか、さらに高みへ進むか悩んでいたとき、当時Sランク帯にいらした方が「あなたはそこに留まっているべき人ではない」と背中を押してくださって。一歩を踏み出す決意を固めました。

ちょうどガチイベ直後のタイミングだったので、みんなにはさらに無理をさせてしまうけれど、もう少しだけ一緒にいてほしいと伝えて、自分も含めて枠ごと鼓舞しながら全力で駆け抜けたんです。
結果はみんなの「おめでとう!」の声で判明したのですが、実際に自分の目で「S1」という文字と、赤みを増したランク帯の色を見た瞬間、ほんとにここまで来たんだと実感しました。

しかも事務所初のSランク帯ライバーになれた達成感とか、根深いコンプレックスから解き放たれてホッとする気持ち、すべてを理解したうえで寄り添い、全力で押し上げてくれたみんなへの感謝なんかが一気に押し寄せてきて、涙が止まらなかったですね。いやぁ泣きました(笑)。

愛されたいなら、まず愛すること

―お話を伺っているだけでこみあげてくるものがあります。アポロンさんは「伝える」ことがほんとにお上手でいらっしゃいますよね。

うわぁ、ありがとうございます!
上手かどうかはわかりませんが、相手ときちんと向き合って、想いを誠心誠意伝えることはいつも大事にしています。

それ以前に、興味を持った人とは仲良くなりたいし、仲良くなればその人のことをもっと知りたくなるし、自分のこともよく知ってもらえたら嬉しい。その繰り返しで相手のことをどんどん好きになるし、もっと思いやることもできる......って、説明すると長くなる僕のこの思考性は、あるライバーさんが配信中ふと口にされた「愛されたいなら、まず愛さなきゃ」って一言に集約できました。
そのフレーズを聞いた瞬間、自分がやってきたのはまさにそういうことだって胸に刺さったというか、言語化されたことでふと自覚できたんですよね。メタ的な話だけじゃなく、ライバーとしても、ライバーだからこそ一層「愛されて当然」ではないことを改めて心にしっかり留めておかなきゃなって。

だから日ごろのやりとりもひとつひとつを大事に、また1周年、1.5周年という記念日にはみんなと記憶に残る思い出をつくりながら、よりお互いの愛を深めていってます!

太陽はきょうも昇り続ける

―愛がどんどん育まれているなか、今後の目標というと?

IRIAMでめざしているものはふたつあって、ひとつは「オリソン!IRIAM MUSIC」で1位をとること。もうひとつは去年の1周年記念のときに参加して、激しい熱戦を繰り広げながら5位にとどまった「IRIAM×コンプティーク 雑誌モデル決定戦」のリベンジです。1位入賞を目標に、来る2周年記念でまたみんなと爆走したいと思っています。
あとは近々Live2Dが実装される予定なので、そこからの新たな展開というものを見据えています。

それと、これは新たな目標ではありませんが、引き続き「まいにち配信」を切らさないこと。30分でも必ずやる。決して無言にはならない。われながら変なところが頑固なのですが、ライバーであるかぎりそこは絶対にブレないでやり続けます。

劣等感にまみれた日々から光ある場所へ抜け出せたのも、続けてきたからこそだから。努力したことが身に付き、自分の特徴になり、揺るぎない自信や拠りどころにもなっているので。何か不慮の事故でもないかぎりはまいにちやります!

―それでは最後に、配信デビューをめざしている方へのメッセージをいただけますか?

ありきたりではあるのですが、あえて言いたいのは「努力は必ず報われる」という言葉を信じてほしいってこと。何をやってもうまくいかない、辛いときには信じたくてもそう思えなくなるのもわかります。自分もそうでした。でも、そうだったからこそ、もう一度信じてほしいんです。

もし行き詰ったなら、周りを見渡すことも大事です。右も左もわからず、自分にとって良いことかどうかの判断もつかないまま、手あたり次第やっても何も解決しないから。まずは一度立ち止まって、わが身を振り返ってみる。そしたら、自分だけじゃなく周りも見えてきて、一人じゃないことに気づけるから。

ほかのライバーがみんな敵であるわけではないから。ときにはひとつのゴールを競って闘うこともあるけれど、向き合って相談もできる。何人かで手を取り合うことも、大勢で肩も組んで輪になることもできる。自分だけでがんばらなくてもいい、みんなと一緒にがんばっていければいい。まいにち続けて、その変化を楽しんでほしい。

それでももし心が折れそうだったら、いつでも話しにきてほしい。悔しい気持ち、人をうらやましく思う気持ちは人一倍わかるので。共感したいです。
あ、でもSランク帯ライバーの功罪というか、近頃「恐れ多いので枠に行きづらい」って声が多いんですよね。これがめちゃくちゃ寂しい。
そういう方は匿名のメッセージを受け付ける「マシュマロ」経由でもかまいません。まずはそちらから始めていただき、いつか枠へ飛び込んでもらえたら嬉しいです。
きょうも枠を快適に温めながら、みなさまのお越しを一同でお待ちしております!

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