INTERVIEW


わん(王)Wan

王と書いて「わん」と読む。配信者であり、作曲家でもある、明るいお姉さん。配信では「わん王国民」と称するファンとともにお酒を飲みながらオリジナル企画などで楽しい時間を過ごす。IRIAMデビューは2023年3月。20時からの配信が多い。

人を喜ばせることが好き。喜んでもらえたら嬉しい。そのために自分を磨き、できることを増やす。そうした日々の努力すら楽しい。

きょうの経験をあすの自分へと丁寧に紡ぐ彼女の姿に、改めて「継続」という言葉の意味を考えさせられた。ただ続けるのではなく、いまあるものを大切に次へとつないでいくこと。

事実、彼女はいまの自分を形成したすべての過去を大事に、時には未来を照らす道しるべとしながら、オンリー〝わん〟の軌跡を描いていく。この先10年、20年経っても変わらず愛され続ける、幸せな配信者の終わりなき物語を――

好きなことを仕事にする

―まずは配信を始められたきっかけを教えてください。

作曲家としてフリーランスで活動しているので、仕事を通していろんな方と接する機会があるのですが、そのなかにすごく生き生きとした表情をされた方がいらっしゃって。お話を聞いたら「自分ができることや得意なことに縛られず、本当に好きなことを仕事にしてみたら毎日が楽しくなった」とおっしゃっていたんです。

それでふと「私が本当に好きなこと」って何だろうって、考えに考えたんですね。私は人と話すのが好きだし、いろんな話を聞くのも楽しい。けれどそれ以上に、話している間だけでも相手のふとした寂しさや孤独な気持ちを埋められるというか、拠り所になれることが何より嬉しいんだと気付いて。それをメインに日常生活を過ごしてみようと思い立ちました。

どうせなら一対一ではなく、たくさんの方とコミュニケーションできる場を求めるなかで配信アプリという存在にたどり着きました。それで、イラストなどの準備もなくすぐに配信できた、IRIAMとは別のアプリを試したのが最初です。
何の予備知識もないままぶっつけでやっていたら、それに気付いた皆さまがやさしく手ほどきしてくださって。アプリのしくみや機材のことから、相手により伝わりやすい話し方みたいなものまで、いろいろ指針を示しながら教えてくださいました。

一カ月ほど経ったころに、いまの事務所から「お仕事として配信をやってみませんか」と声をかけてもらって、IRIAMでの活動がスタートしました。

経験則を生かして最大限の効率化を

―IRIAMで配信するにあたって、何か準備されたことはありますか?

前のアプリで知り合った方がIRIAMでも配信をされていて、何度か見に行ったこともあったので、配信の雰囲気とかギフトがかわいいとか、ひととおりの流れはイメージできていて。不足していた基本的なしくみやイベントなどの細かな情報については、事務所のサポートを受けながら勉強しました。

デビュー前にたくさんフォロワーも増やしたいと思いながら、当時は海外に滞在していたこともあって、時差の関係でいわゆる「枠回り」がしづらい状況だったんですね。
それでもとにかく自分のやり方でできることをやってみようと、IRIAMのプロフィール欄でしか見られないコンテンツを毎日更新したり、それをSNSで発信することで少しでも興味を持って見に来てもらえるよう努めたり。限られた時間や環境下で、自身のこれまでの知見や経験を総動員させながら、効率重視で進めていきました。

おかげさまで初配信には想像以上にたくさんの方が来てくださいました。皆さまに注目していただけるまたとないこのチャンスを最大限生かして、できるだけ多くの方と出会って「わん(王)」という配信者を覚えていただきたかったし、その前にもう楽しくて嬉しくて。この幸せな時間がずっと続けばいいのにと思いながら話していたら、もはや終わりどきがわからなくなってしまって(笑)。すっかり夜も更けてきたころ、ようやく枠を閉じたという感じでしたね。
思い出深い一日でしたし、ありがたいことにそこで知り合った方々がいまでも変わらず来てくださっています。

歯を折るほどの熱い想い

―続いての大きな出来事というとトップバナーチャレンジでしょうか。緊張のあまり過度に食いしばって奥歯が折れたというお噂も耳にしておりますが......

よくご存じで(笑)お恥ずかしいかぎりですが事実です。終始すさまじい緊張とともに臨んでいたので、全身に力が入って無意識に歯を食いしばっていたんでしょうね。気付いたのはラストランの翌朝だったのですが、洗面台に立ったとき、奥歯が一本折れていてびっくりしました。

私、中学卒業後すぐにフリーでお仕事を始めたもので、受験や就活を経験していないんですね。そのせいか、人と競って順位がつけられたり、周囲と比較されて自分に点数がついたり、さらにその結果が広く明示されるとか、すべてが未体験で怖くて仕方なくて。きっとそこからの緊張も大きかったんだと思います。

あとは責任ですよね。自分も1位になりたいけれど、それ以上に皆さまが「わんさんを1位にしてあげたい」と思ってくださっているなか、実現できなかったらどうしようという不安や申し訳ないという気持ち。活躍することで事務所やイラストレーターさまに恩返しがしたいという思いもあって、自ら過剰なプレッシャーをかけてしまった結果、歯が折れてしまったという。いまとなっては笑い話ですけれどね。

結果は5位でした。完走した瞬間は、何より応援してくださった皆さまへの「本当にありがとうございます!」という大きな感謝でいっぱいでした。同時に、自分の力不足を悔む気持ちもあって。「次は絶対1位をとるからな!」と強く心に誓いました。

新しい自分との出会い

―その熱い感じ、普段のしっとり落ち着いたお姉さんイメージとのギャップがすごいです(笑)。

われながら、自分にこんな「バトル適正」があったなんてと驚かされました(笑)。
適正つながりで言うと、IRIAMのポイント計算とかの作業が楽しくて、意外と自分は数字を見るのが好きなんだってことも判明しました。

歌もそうですね。職業柄、プロの歌を間近で聴いているので、とてもじゃないけれど自分が配信で歌うなんてことは考えてもいなくて。皆さまから「歌わないの?」と言われてもなかなか思いきれずにいたのですが、重ねてリクエストしてくださるので、トップバナーチャレンジを機に歌枠を始めたんです。
いまだに自信はありませんが、思いのほかたくさんの方が来てくださるし、皆さまの温かい反応にいつも背中を押してもらっていて。練習をしてもっとうまくなりたいと思っています。

あと以前はちょっとしたことでくよくよしたり落ち込んだり、悩みや後悔を長く引きずったりしていたのですが、IRIAMを始めてからは気持ちをうまく切り替えられるようになりました。
配信を終えて、一日ごとのコミュニティランクの集計が終われば、それで一旦リセットする。何があっても翌日までひっぱらない。寝て起きたら忘れて、きょうはきょうでがんばろう! と、まいにち練習をし続けた成果が出ています。

あと私、自分の端末ですべての配信を録画していまして、デビュー以来ずっと、配信した日は収録を見返して、夜な夜な一人反省会をしているんです。もともと日記をつける習慣はあったのですが、それに配信での出来事や気付いたことをすべて大切にとどめておく。
たとえば、BGMの音量とか滑舌とか、歌い方とかですね。ちゃんと伝わるような配信ができているか、細かくダメだしをしながら改善点をメモして、次回以降で調整する。その繰り返しで配信スキルを磨いていって、配信者として成長できればと願っています。

もちろん嬉しかったことや皆さまとのすてきな思い出もたくさん書いてあって、もはや宝物ですね。
誰かを喜ばせたいと思って始めた配信ですが、IRIAMでの活動を通して自分自身にも嬉しい変化やたくさんの発見があって。一緒にいてくださる皆さまにもIRIAMにも本当に感謝しています。

伝えることをあきらめない

―わんさんの配信に対する真摯な姿勢が伝わってきます。

それでももちろん悩んだり、迷ったりすることはあります。
皆さまに満足していただける配信をめざすといっても、おひとりおひとりで趣味趣向も違えば、イベントやコミュニティランクに対する考え方などもそれぞれですし、どう向き合うかの葛藤はどうしたってあります。

皆さまに大きな応援をいただくたび、自分が果たしてそれに見合う配信ができているだろうかと気が気でなかったこともありますが、皆さまの「心配しなくて大丈夫、応援するよ」という言葉に勇気をいただいて。これでいいんだ、とにかく自分ができることをやろうと歩き続けた結果、自分にとっても皆さまにとっても、とても居心地良く感じられる、いまの配信のかたちにたどり着きました。

あと「伝えること」も大切にしています。
皆さまのお気持ちやお力添えを最大の成果につなげられるよう、数字の部分やスケジュールなどを綿密に計画立てて、がんばりたい理由も含めてしっかり伝えること。それでも大きな目標となると言い出しづらいものですが、IRIAMでは思い切ってお伝えしたほうが良いといいますか、皆さまからもちゃんと伝えてもらったほうが良いとのお声をいただくことが多く、プロフィール欄やSNSにも書くなど心がけています。

思い出を大事に残す

―ファンの皆さまとの丁寧なコミュニケーションのなかで思い出に残るエピソードというと?

うーん、たくさんあってとてもひとつには絞れないです。
たとえば「えきポス!」などの掲載系イベントですね。遠くから足を運んで「イベントをきっかけに旅行ができて楽しい」と言ってくださったり。秋葉原駅の「IRIAM活動1周年」広告をたくさんの方が見に行って、一緒にお写真を撮ってくださったり。IRIAMってバーチャルの世界でありながら3Dにも影響を及ぼすといいますか、配信を飛び出したコミュニケーションやつながりが生まれるんですよね。

誕生日や活動1周年記念の際には、ありがたいことに寄せ書きをくださいました。皆さまのお心遣いというか、お時間やお手間をいとわずに温かいお気持ちを届けてくださる。そのやさしさが嬉しくて、感謝してもしきれないですし、そんな皆さまのことが好きで仕方ないんです。

これってしみじみバーチャルの良さというか、リアルにはない貴重な体験をさせていただいていると思うんですね。
一般的な初対面だと、お相手の心の中を知るまでに時間がかかりますよね。もちろんそれはそれで楽しいやりとりなのですが、先に内面で触れ合って、心の中からその人を好きになれる、バーチャルならではの対面もすてき。ぜひぜひ多くの方に経験していただきたいです。

あとは、オリジナルでやっている「歌詞公募」企画ですかね。特定のギフトで新曲の歌詞を一単語決められるという企画で、実際にオリジナル曲として制作リリースもしました。
つくる過程の楽しさはいうまでもなく、最高の思い出にもなっていて。自分はもちろん、一緒に作った方も、たとえいま配信に来られない方であっても、いつでも聴けて「この人からこの歌詞をもらったな」「自分の歌詞だ」「あの頃がんばっていたな」なんて、それぞれが懐かしく思える。そうした感覚や日々の記憶を大切にしたいんです。

実際に私には過去も大事だから。いまの自分があるのは過去があるからで、現在がまた過去にもなるし、未来をも生み出しているわけで。その大事な日々を大切にアーカイブできればと思って始めた企画です。これからもたくさん「思い出」を残そうと思います。

―常に目標を掲げて達成し続けているわんさんが、今後さらにめざされていることはありますか?

本当にありがたいことですが、これをやりたいと思ったことはすべてかなえていただいています。

ファンタジーなことを申しますと......皆さまとDiscord上で展開しているサーバー内に「わん王国」というファンコミュニティを築いているのですが、皆さまは王国内でお好きな役職を名乗れるんです。「文部科学大臣」とか「ギャル」とか、ほかの方と被ってなければ何でもOKという自由な設定なのですが、嬉しいことに豊富な人財に恵まれて、人口も増えてきました。
いつか実際に「わん王国」マップをつくって、仮想空間で可視化できればいいなぁなんて。〝第二の家〟と思ってもらえるような王国をいつか築ければなって。
その日が来るまで、できるかぎり長く続けよう。ひさびさに来られた方にもこの人まだやってるんだって。わんさん、まだ私のこと覚えているんだって驚かせたいですね。

私個人としては、クリエイトの実績を積み上げていきたいですね。動画であったり作曲している風景であったり、配信に来られるまでの〝ラストワンマイル〟を埋めるようなコンテンツを創作したいです。念願のLive2Dモデルも完成しましたし、さらに活動の場を増やして、作曲や演奏など幅広い依頼を受けられるような、マルチな存在になっていければと思っています。

そしてシンプルに「よい配信者」であること、ですね。IRIAMライバーが10年後、20年後にどうなっているのかなんて誰にもわからないけれど、そこがどのような未開の地であっても、私は変わらず「よい人間であろう」と努力している自分でありたいと願っています。

温もりある
バーチャルの世界へようこそ

―それでは最後に、配信デビューをめざしている方やリスナーの皆さまにメッセージをいただけますか?

一生懸命に取り組んでいれば、必ず誰かが見ていてくれるから。すぐにランキングや結果には結びつかなくても、自分を見てくれる・見守ってくれる人は絶対いるから、あきらめずに前向きにあろうとする姿勢を忘れないでいてください。

前を向いて配信を続けていればきっと嬉しい変化があります。私自身もいろんな発見や変化がありました。気持ちの切り替えができるようになったり、緊張しがちな自分が勇気を持って進めていたりします。
なので、いまご自身のことが好きな方もそうでない方も、ご自身の知らない個性や魅力を新たに発見できたり再認識したりできる場所になると思います。
初めてIRIAMに触れられる方には、バーチャルもとても温もりのある世界であるってことをお伝えしたいですね。寂しいと思ったらすぐに人と触れ合えて、いろんな人と出会って、人を内面から好きになれる。そんな時代が到来しています。皆さまと出会えるのを、お話しできる日を楽しみにしています。

最後に、わん王国民の皆さまに感謝を。何度お礼を言っても言い足りないくらい、いつも幸せをありがとうございます。大好きです。

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