キャラと目が合う
ミラクルなセカイ
―占い師ライバーさんということで、いろんなお話を伺えるのが楽しみです。まずはライバーになろうと思われたきっかけからお伺いできますか?
人と話すことが好きで、別のアプリでラジオ配信を楽しむようになったのが最初です。
しばらくしていまの事務所とご縁ができたのを機に、IRIAMと出会いました。
失礼ながらそれまでIRIAMのことを知らなかったので、まずは実際の配信を見てみようと、リスナー活動を始めました。入室した瞬間、目の前にキャラがいて、自分に向かって話してくれるのにびっくりしちゃって。臨場感というのか、本当に至近距離で向き合う感じなんだって、ドキドキしたのを覚えています。
同時に、これはハマっちゃうよねって、いろんな人が「IRIAMは沼る」と言っているのがふに落ちた瞬間でもありました。
改めて自分がこういうセカイでやっていくんだって、漠然とですが意識しながらキャラについて考えたとき、やっぱり「占い師」なのかなと。事務所の入所面接のとき、特技を聞かれて「占いならできます。むしろ占い以外はしないですけどいいですか」って何とも強気な発言をしたこともあって(笑)、そのままキャラに生かしたものです。
待望の初配信で○○に襲われる
―占い師さんとなると、デビュー日なども良い時期を見定めながら計画されたのでしょうか?
そういうの、まったくないんですよね(笑)。
もともとの性格が準備を整えてじっくり進めていくというより、思いついたら何でもすぐやっちゃいたい直感型タイプなんです。
だからデビューに関しても、姿さえ整えばすぐにでも配信するくらいの勢いでいて、初配信の日が待ち遠しくて仕方なかったです。
でもその待望の初配信は、いまでは失敗談として披露しているくらいダメダメなものでした。朝枠をやると決めていたので、デビュー前から朝5時起床、夜10時就寝で生活リズムを整えていたんです。
そしたら記念すべき21時からの初配信で私、とんでもない睡魔に襲われてしまって......開始早々はお祝いムードで場も湧いたのですが、それが一旦落ち着くともう眠くて、眠くて。
もともと声のトーンが低めなうえに、話すペースもどんどん遅くなる。目はコメントに追いつかないし、しまいには「眠いのできょうはこれで終わります」って1時間で枠を閉じちゃうとか、われながらありえない状況でした。いま思い返しても反省点だらけです。
幸いにも見ていた方にはそれが「初配信なのにすごく落ち着いている」とか「おとなしい子」と映ったみたいで、その後もみなさんが遊びに来てくださったことに救われました。
「占いの生かし方」を伝えたい
―「占い師」ということでどこか神秘的なイメージも抱くのも影響したのかもしれませんね。
そうかもしれません。ただ私は占い師ライバーではあるものの、配信はいつも「占い枠」ではないし、毎回占いの話をしているわけでもなくて。もちろんご依頼があれば占いもしますが、体力的に月1、2回くらいしかできないこともあって、普段は雑談中心でリスナーさんたちとわちゃわちゃ盛り上がるような枠になっています。
それでも占い師ライバーを公言しているのは、配信を通して占いに対するイメージを少しでもよくしていければという思いがあったから。占いというと、人によってはうさん臭いとか、依存症になってしまうみたいな印象を持たれている方もいらっしゃいますよね。そうしたイメージを少しでも取り払っていきたいんです。
自分のポリシーとしては、占いはあくまでも「道しるべ」だってこと。たとえば、道に迷ったときに地図を広げるといろんな標識が目印になり、ナビであれば最短ルートや時間はかかるけど安いルート、料金はかさむけど最速とか、いくつかの道が提示されますよね。
同じように私の占い、得意なのは数秘術ですが規約上の制限もあってIRIAMではタロット・オラクルカードで、何かに迷ってこられた方にいくつかの道をご提案しています。
けれど道を選択するのはあくまでもご本人自身であること。きちんと考えて選択して、自分で動いた結果であれば、たとえそれがどのようなゴールにたどり着いても納得できるから。逆に占いで良いことを言われても、それにあぐらをかいてしまったら求めた結果にたどりつけないことだってあります。だから自分で決めて動くことを何より大事にしてほしいし、占いがないと決められないようには絶対にならないでほしい。
そうした想いを伝えたくて、トップバナーチャレンジに臨みました。5位以内に入賞できたらインタビューで発信することを目標に掲げていたんです。残念ながら結果は21位と、まるで届かなかったんですけどね。
もともと配信で入賞するとか上のランクをめざすみたいな心づもりもなかったので、そのときはただ自分の力不足の結果として受けとめた感じです。
でもなんだかんだそのあとSランクまで行くことができたので、いまはがんばってそれを続けようと思っています。
ぶりっ子枠、はじめました。
―いまあっさりとおっしゃいましたが、トップバナーチャレンジで思うような結果が出なくて悩まれる方も少なくないなか、さらにSランクまでたどり着くのは大変なことかとは。そこまでの経緯をお伺いできますか?
それについては「ぶりっ子枠」の存在が大きいですね。
HoneyWorksさんの「ファンサ」っていう曲があるんですけど、ご存じですか? がんばっている女の子をみんなで応援するような歌詞ということもあって、YouTubeにたくさんアップされていたり、IRIAMでも可愛いライバーさんたちがイベントのラストランに恒例で歌われてたりするのですが。
その曲を歌ってとリクエストされたとき、私のキャラや声のトーンとは合わないし、そもそも可愛い気のない性格なので(笑)、絶対無理だよって断ったんです。その後も歌う・歌わないの攻防を繰り広げつつ、もはやそのやりとり自体を楽しんでいる節もありつつな感じでいたのですが、キリがないので「そこまで言うなら一度だけ歌うけど、それ以降は絶対歌わない」って約束で、トップバナーチャレンジのラストランで歌ったんです。
なのにイベント終了後も余波が続いたというか、むしろそれをきっかけに可愛い歌をリクエストし続けるリスナーさんが一定数存在していて。当初はふざけて「歌わせたいなら○ポイント以上のギフトを用意して」とか遊び感覚で言っていたものが、いつしかすっかり企画として成立していて。さらに私が「可愛い」とか「好きだよ」とか言われるのさえ嫌がり、「可愛いじゃなくてかっこいい、ね」「好きの気持ちは受け取れないのでその辺に置いておきますね」とかことごとく否定したり避けたりする〝塩対応〟がおもしろいとなった結果、可愛い系いじりを楽しむ「ぶりっ子枠」が誕生しました。それがレギュラー化して、ギフトの量が急増するきっかけになったたんです。
気づいたときにはAランクに上がれていて、さらにはSランクまで到達していたという。
一応誤解のないようお伝えしておくと、嫌々やらされているとかギフトのために無理をしているわけではないです。ぶりっ子枠にかぎらず私、本当に嫌なことはしないと公言しているし、リスナーさんたちもそれは重々わかってくれているので。私も、リクエストする人も、見ているリスナーさんも皆が楽しめる範囲でという、互いに暗黙の了解があって成立している企画なんです。
これに限らず、うちの枠は雑談の流れで何かアイデアが生まれて盛り上がったときに「次はそれ企画にしてみる?」みたいなノリが多いかな。続けているうちに新たな展開が生まれたり、どんどん変化したりしながらいろんな企画が続々誕生しているんですよ。
「ガチ恋禁止」がくれた
よりどころ
―そのようないきさつがあったとは。リスナーさんとの相互理解の深いコミュニケーションもすてきですね。
お互いの距離感はとても大事にしています。
私、プロフィールにも書いているとおり「ガチ恋」も「最推し」も禁止していて、さっき言ったもともとの「塩対応」キャラも含めて、いまや「岩塩枠」と化しているんですね(笑)。おもしろおかしく命名してくれたのはリスナーさんで「ここの枠は訓練されたリスナーじゃないといられない。ふさけすぎると塩対応どころか岩塩で殴られるレベル」って。言い得て妙ですよね。
だからって普段からピリピリしているとかではないですよ? 塩対応は遊び感覚だし、あとはみんなが不快になるような発言とか、空気を読まない気持ちの悪いコメントなどがあれば、我慢せずに「やめて」とはっきり伝える。マナーがない方やガチ恋を求める人にはお応えすることができないというだけなんです。いくら本来の自分とは違うキャラの姿をしていても、素の自分が不快に感じる芯の部分は同じなので。
逆に「絶対に見せたくない一面」というのもあるので、キャラとしての見せ方にはずっとこだわっていて。精神的にブレることなく、毎日一定のテンションで配信したい。けれどそれを生身でやるとなると簡単ではなくて、いろいろ思い悩みながら「自分らしい配信」を模索していました。
たとえばリスナーさんと一定の距離を保つことで細かな変化が伝わらないよう制御するとか。でもそれも正解かどうかもわからず、ずっとモヤモヤした状態でした。
それがあるとき、私の「ガチ恋・最推し禁止」というプロフィールを見て、賛同してくれるライバーさんたちと出会えたんです。互いに枠を行き来して話しているうちに、常識的な一線を越える、心無いガチ恋はきっぱり否定しようと「ガチ恋撲滅委員会」を結成するまでになりました。もちろん形だけで、何か活動するとかではないのですが、そうしたよりどころがあることで、不快なことは不快だと言ってもいいんだ。素の感情に嘘をつかなくてもいいんだって確信できて、それまでの葛藤に終止符が打てたんです。
同時に、自分の中でライバー活動をがんばろうというスイッチが入りました。ライバーを続ける意義というのでしょうか。ライバーとして「なりたい自分」にはなれているけれど、言いたいことが言えないでいる。むしろ理想的なキャラだからこそ、何を言われても否定しづらくて我慢されている方もたくさんいると思うので。
でも大事な部分はあきらめないで守ってほしいなって。勇気は必要だけど、そうすることでもっと楽しく配信に向き合えるから。実際に経験した自分のことばや活動を通じて、もっともっと伝えていきたい。同じようなことで悩んでいるライバーさんの支えや安心感につながればなと思っています。
当たり前のことが
当たり前にできる枠
―悩んでいらっしゃる方には心強いことばになったと思います。
ちなみに「最推し禁止」はなぜなのでしょう?
私、本来はめちゃくちゃ負けず嫌いなんです。
だからリスナーさんが「数秘フィンが最推し」って言っていたのに、ある日ファンマークが消えていたり急に枠からいなくなったりしたら悔しいし、心変わりした先のライバーさんに絶対嫉妬してしまうから。だったら最初から最推しって言われない方が気持ちも楽だし、心も乱さずに済むという、心に波風を立たせない防波堤としての「最推し禁止」なんです。
いろいろ決めごとがあって一見めんどくさそうに映るかもしれませんが、基本はみんなと普通に雑談を楽しんでいるんですよ。何でもない話で盛り上がったり、ときには時事ネタや真面目な話をしたり。もちろんたまには占いの話もするし、ふざけるときは全力でふざける。ちょうどいい距離感や空間のなかで楽しむコミュニティって感じです。
もちろん誰かを占っているときは相手と一対一で話を聞きたいので、ほかの方にはコメントなしでお願いしています。占いとして私が依頼を受けたものだし、そこは真剣に取り組みたいので。
占い枠のときは立ち絵が初期の占い師バージョンになるのですが、万一占いの最中に入ってこられた初見の方でその状況がわからず、いろいろコメントをされたときには簡単にご説明します。それでもコメントし続けたりふざけたり、許容の範囲を超えられた場合は退出いただくこともあります。
私、たとえVの世界であってもコミュニケーション上の礼儀やマナーというか、相手のことを思って会話することを大切にしたいんです。たとえば、挨拶をするとか。枠独特の挨拶という意味ではなく、はじめまして、こんにちはという、ごくごく普通の挨拶。こちらから挨拶したものに対してまったく見当違いの返しをされると戸惑うし、どうしても一歩引いてしまうんですよね。
それもあって、うちの枠は必然的に相手を思って受け答えができる方ばかりだし、みなさん場の空気も読んで発言してくださいます。だから「訓練された枠」とかいわれちゃうんですけどね(笑)。でもそうした規律ある枠であることや、すてきなリスナーさんたちに恵まれていることがとても誇らしくもあります。
「こんなに応援してもらえる
ライバーになれたんだ」
―そんなリスナーさんとの絆もあって「IRIAM活動1周年」イベントでは見事1位と、枠の成長が結果にも現れていましたね。
あそこまでいけたのは、絆だけじゃなく、イベントを本気で走るぞって強い想いがあったからなんです。
その少し前に事務所の後輩がトップバナーチャレンジで1位をとっていて、獲得ポイントもすごかったんです。対して、私は一年間配信してきたけれど、Sランクにいながらそんな数字を記録したことがなくて、悔しくて仕方なかった。それでお恥ずかしい話、私もそんな記録的な数字を残したい、Sランクにいるのに勝てないライバーだと思われたくないって、枠の中でぎゃんぎゃん泣きながら訴えたんです。もちろんそんなことは初めてでした。言うと幻滅されそうな本音でもあって、ひた隠しにしてきた部分でもあったから。
それなのにみんな驚きも否定もすることなく、真正面から受け入れてくれて。そういう感情はもっと出していいんだよって言ってくれて、勝ちたいという想いにも応えてくれたんです。なんならこれまでの想いや熱量が一気に爆発したって感じでした。
そうそう、1周年イベント期間中だけは最推しを解禁して、ガチ恋についても企画として一部解放したんです。お礼品として「ガチ恋スマホリング」を作って、婚約指輪のごとくイベント中の期間限定でガチ恋許可みたいな楽しみ方。全力でふざけながらとにかく盛り上がったお祭りウィークでした。
あと、1周年の記念にリスナーのみなさんからサプライズで寄せ書きの色紙をいただいたんです。〝塩気〟の強い、互いに一定の距離を置いているようなうちの枠で、そんな心のこもった贈り物をいただけるなんて思ってもいなかったから、ただただ驚くばかりでした。
Twitterで誰かが呼びかけているのを見かけたとかがあれば別だったんですけど、完全に水面下で、私にまったく知られることなく。しかも色紙3枚分・合計52人もの方がひとつひとつ丁寧につづってくれたのが伝わってくる、想いのこもったメッセージばかりで、ただただ感動でした。自分が、数秘フィンがこんなに愛されていたんだ、こんなに応援してもらえるライバーになれたんだって、1位以上の結果をもらえた気がして感謝でいっぱいになりました。
伝え続けることで支えたい
―伺っているだけでも感動が伝わってきます。今回のフィンさんのさまざまなお話を通して、勇気を持てた方も多いと思います。
それでは最後に、今後の目標とこれからIRIAMに触れられる方へのメッセージをいただけますか。
これまで目標に掲げていたのが「ガチ恋・最推し禁止でS3ランク達成」だったのですが、ありがたくも達成できたいまの時点では特に目標も設定していなくて。
ただ日々の配信では、繰り返しになりますが、たとえ微力でも自身の経験や考え方を臆せずに発信していくことで、誰かの支えになれればとは思っています。
発信だけじゃなく、ただうちの枠に遊びに来て元気に騒いで帰るだけでもいいし、悩みがあれば相談してくれてもいい。とにかく一人で抱え込まなくていいんだってことを伝えていきたいです。
IRIAMに初めて触れる方には、ライバーさんでもリスナーさんでも、かかわる方が互いに気持ちよくコミュニケーションできるよう気を留めてもらえたらと思います。
ライバー側はまだ表情や声のトーンで悲しいとか嬉しいとかいろんな情報を伝えられるけれど、リスナーさんのコメントは文字情報だけだし、想いを伝えるにも限界はあって、意図するところではない伝わり方をすることがある。ちゃんと伝えているつもりでもねじれて誤解されたり、ふとしたコメントで受けた側が傷ついたりすることだってある。
そうした難しさや繊細な部分があることを常に意識して、互いに相手を思いやりながら配信を楽しんでいけたら。IRIAMで生きるすべての人がよりよく過ごせる、そんなセカイをみんなで築いていけたら嬉しいです。