セルフプロデュースを体現できる場所
体現できる場所
―ぴよちゃんさんが配信活動をはじめられたのは、やっぱり声優をめざされていることと関係しているのでしょうか?
そうですね。IRIAMと出会ったのは2021年の2月ごろ、声優をめざしていろんなレッスンを受けているなか、すでに声優として活動しながらライバーとしても活躍されている方に教えていただいて配信を見に行ったのがきっかけです。
その時点ではバーチャルライバーってどういうものなのかも知らなくて、配信を初めて見たときはてっきり全身タイツで、体にいろんな配線をくっつけてやってらっしゃるのかとばかり(笑)。でも実際はIRIAMで配信するのに特別な機材や技術的な壁はなくて、だれでも立ち絵を一枚用意すれば簡単にはじめられるってことにものすごく衝撃を受けたのを覚えてます。
だから最初は自分がライバーになるつもりというか、なれるとも思っていなかったんですけど、何カ月かリスナーとして見て回っているうちに私もやってみたいなって思うようになりました。
ためしてみたら想像以上に自由度が高くて、これなら自分が思ったとおりの立ち絵やこだわった演出を実現できる。IRIAMって自分のやりたいことをいくらでもデザインしていける場所なんだって思えたんです。
声優にとって、セルフプロデュース能力はとても大切な要素だと常々感じているのもあって、自分は何が得意で何が強みなのかをアピールできるようになりたいなって。だから配信をはじめることとは別に、ずっと前から自分のアピールポイントをどう設定してどう見せていくかみたいなことを頭の中で常にぐるぐる考えていたんです。
なので、配信のために一からキャラクターを考えてというよりは、これまで考えてきたセルフプロデュースの構想をIRIAMでそのまま体現していくというか、配信活動を通じて実際にいろいろ試してみようという感覚でした。
がんばりが数字になった
トップバナーチャレンジ
―そんな背景があったのですね!
実際の配信ではご自身の構想どおりに進みましたか?
準備段階では立ち絵にひたすら好きなものを詰め込んで、デザインもそれぞれこだわりつつ進めていきました。
でも配信って、お話以外の要素もたくさんあるじゃないですか。初見挨拶とかコメントやギフトへのリアクションとか、ライバーならではの要素っていうか、配信独特の文化のようなものがたくさんありますよね。それをどう工夫すれば喜んでもらえるかな、こうしたらリスナーさんと盛り上がれるかなっていろいろ考えるのも楽しかったですね。
初配信に関しては、先輩ライバーさんから「すごくたくさんの人が来るけど、配信は流れが大事。ただコメントを順番に拾い続けてちゃダメだよ」ってレクチャーを受けていたので、そこを意識しながらなんとか無事に終えることができました。
トップバナーチャレンジは最初の指標というか、がんばってきたことが初めて数字として見える機会なので、1位という目標を掲げて準備しました。毎日企画して、これまでやったことのないものにチャレンジして......ってこれは本気で入賞したいイベントで走るときにはいまでも必ずやっていることなので、トップバナーチャレンジでそのベースをつくった感じです。
結果1位入賞!もちろん一生懸命がんばったからというのもありますが、リスナーさんやいろんなラッキーに支えられたおかげですね。みんなとの良い思い出として残っています。
「すべて自分につながる」
―ぴよちゃんさんの配信はいつも楽しそうな企画が盛りだくさんで、お礼品やグッズなども豊富に展開されていますよね。色づかいやスタイリングもすごくお上手だなって。
嬉しい、ありがとうございます!どういう企画でどんな返礼品にするか、そういうのもすべて自分のブランディングというか、ぴよちゃんのキャラクターや特徴に結びつくものだと思うんです。みんながやってるようなポピュラーな企画であっても、似た企画をそのままやるんじゃなくて、そこにちょっと違ったニュアンスというか、自分らしさをデザインできればなって考えてます。
デザインに関しても、私はLive2Dモデルじゃない分、ほぼ毎月新しい立ち絵を用意して飽きさせないよう工夫するとか。自分で絵は描けないけれどちょっとした加工ならできるので、カラーバリエーションを増やすとか。それだけでも見た目の印象は変わるので、いつも10色以上をヒーヒー言いながらつくってます(笑)。
そうそう私、IRIAMの背景とか限定ギフトがめちゃくちゃ好きで。どれも季節に合ったステキなデザインなんですよね。せっかくなら画面を開いたときに一枚絵としてきれいに見えるようにって、背景を意識して立ち絵をデザインし直すとか、トータルデザインとして考えて全体をコーディネートするようにしています。
あとは、素材を組み合わせてヘッダーデザインやサムネイルをつくるとか。特にヘッダーデザインはリスナーさんたちに好評だったので、ならこれをグッズにしてみようって発想して。ファンの方からリクエストをいただくことも多くて、いろいろ作るようになりました。
マグネットといえばぴよちゃん、タオルといえばぴよちゃんと思ってもらえるよう、毎回工夫を凝らしてます。
自分を知ってもらえる
雑談こそ大事に
―きっとそういったこともセルフプロデュースの一環なんですよね。
もちろん純粋に楽しんでやっているところもあるんですけどね。
配信を始めるまでは、声優としてデビューするのにどう練習を重ねるかが一つの課題だったんです。なかなか実践の場がないからやれることも限られるし、行き詰まっていて。
それがIRIAMではいろんなことにチャレンジできて、自分のできることや得意なことを見つけたり、リスナーさんからここが好きだって教えてもらえたり、新しい発見も多いんです。
発見といえば、「雑談」に対する見方も大きく変わりました。
雑談って、誰でもできるものだと思っている人が多いし、私もそう思って始めた一人なんですけど。でも実はとても奥が深くて、日常の出来事をどう切り取るかでその人の個性やこだわりが全部出ちゃう。思ってる以上に「自分らしさ」が出るコンテンツなのかなって。
それに、どこからどこまで話すとか、どう伝えるかで場が盛り上がるかどうかも変わってくる。演出とか構成力も問われるんです。
私も一年ほどたってようやくわかってきたことなんですけど、雑談ってほんとすごいなって。おもしろい企画で知られるのも嬉しいですけど、雑談を通していろんな私を知ってもらえることはとても大きくて。改めて雑談こそ大事にしたいなと思っています。
突然のスイッチOFF
再びONへ
―こちらこそ、新たな視点をいただけて、IRIAMの「あなたらしいキャラで」というコンセプトに対する意識が深まった気がします。考えれば、出演、脚本、演出や舞台デザインから広報まで、確かに配信活動は総合プロデュースですね。
そうなんです。実際いろんなことに挑戦できて、配信としてもかたちになって。おかげさまで思った以上に良い成績も残せました。
それでも一周年を目前にしてこれからを考えたとき、声優になるためにIRIAMを始めたのに声の仕事につながっていないことが不安になってきて。本来の目的はなんだったっけ? 私がいまやるべきことは? このまま配信に時間を割いていて大丈夫? って、迷い始めたんです。
リスナーさんたちにも相談しました。明るく笑顔になれる雰囲気づくりを徹底していた枠で悩みを打ち明けるなんて、絶対嫌だったんですけどね。それくらい追い込まれてたんです。
そしたらみんな心から応援してくれて、無理しないで声優の道に専念してがんばれって言ってくれて。それで配信頻度を減らして日々の活動や「ありたい姿」を見つめ直す時間をつくることにしたんです。
けれど現実は配信を休んだことで何かが見えてくるわけでもなくて......で、気づいたんです。ただ考えてるだけじゃ何も始まらない。いま自分ができること、一生懸命やれることを全力で続けることで見えてくるものがあるって。私は人前で話すのが好きだし、これまでの実績もある。なら、いまは配信をがんばり続けることが大事なんじゃないかって。
そこから気持ちを切り替えて、オリジナルプチギフトのイベントに出たり、配信回数を増やしたりしていって、配信にかけるエネルギーを徐々に増やしていきました。とはいえ、特にガチイベントで走ったとかではなく、ときどき企画を挟みながらリスナーのみなさんと楽しむという通常スタイルではあったのですが、それが思った以上の結果につながって。4週連続でランクアップしてS3ランクまで到達できたんです。
一年半やってきたいまだからこそ、そのありがたみがわかるし、大きなイベントで結果を残せた以上に嬉しくて。見守り続けてくださるリスナーの皆さんに心から感謝しています。
エンタメ要素を取り入れた
適度な距離感の保ち方
―応援してくれる方の存在って大きいですよね。
いろんな方が来てくれて、応援してくれる。もちろん人の入れ替わりはありますが、トップバナーチャレンジのころからずっと見てくれている人も多くて。本当にありがたいなって。大事にしなきゃなって思ってます。
一方で私の配信は「ドッジボール」に例えられてもいて。初配信のときから「ガチ恋はブロック」って言い続けているんですけど、実際の配信にはいろんなコメントが飛んでくるわけなんです。それを私がドッジボールのごとく華麗にかわし続けているということで名付けられたものなのですが(笑)。
基本、枠内にはルールや禁止事項を設けていないんですけど、「そのときの気分でばんばんブロックしちゃうから気をつけてね!」って配信中に言ってはいます。実際にブロックするときはほぼ予告なしで、状況によってはネタにも見える感じにしながら、ひとつのエンタメ要素になるよう工夫しています。みんなも必要な対応だとわかってくれてるから笑いごとにしてくれて、ブロック特典というワードも生まれたくらい。
雑談というコンテンツはどうしても身を削りやすいし、リスナーさんたちとの関係性がぐっと近くなる分、距離をつかみづらくなる人も出てくる。ライバーあるあるじゃないけれど、対応に悩まれてる方も多いと思います。でもそういうときはミュートやブロックを使ったほうがいい。枠を守るのもリスナーさんを楽しませるのと同じくらい大事なライバーの役割だと思うので、与えてもらっているバリア機能には頼ってほしいなって思います。
私がめざしているのは人が多い配信なんです。ランクや入賞よりもいろんな人が来てくれて、ちょこっとずつでも応援してくれるような枠をめざしているんです。もちろんランクキープやイベントもがんばれたら嬉しいけれど、あまりに無理のある配信で上をめざしてもリスナーさん一人ひとりに負荷がかかるし、それで配信に来づらくなってしまったら意味がないと思うので。
ギフト目的だけの企画を立てたところで、自分が楽しめてないのにリスナーさんを楽しませるなんてできないし、気持ちも続かないから。しっかりできる範囲を見定めて、無理はしないこと。その分、人がいっぱい来る枠として成長して、もっともっと私のことを知ってもらって、ファンになってくれる人を一人ずつでも増やしていければいいなって思ってます。
ひたむきに続けた先で
つかんだチャンス
―きょうはいろんなお話が伺えて楽しかったです。
それでは最後に、ぴよちゃんさんから皆さんへのメッセージや、ライバーをめざされている方へのアドバイスなどをいただけますか。
実は一つご報告があって。
ライバーとしての目標はさっきのとおりなのですが、声優としての目標もこのたびIRIAMを通じて達成できたというか、良いご縁に恵まれて声のお仕事ができるチャンスをいただけたんです。ちょうどお礼がしたいと思っていたところだったので、この場をお借りして直接感謝をお伝えできて嬉しいです!
目的を見失いそうになったあのとき、配信頻度を減らしながらもやめなくてよかったって。自分ができることを最大限がんばり続けることでつかめるチャンスがあって、それが大きなあきらめなければ何かにつながることもあるんだよって、多くのみなさんに伝えたいですね。
―おめでとうございます!IRIAMとしても、「なりたい自分になれる」「ミライにつながる」お手伝いができて嬉しいですし、皆で一緒に喜びたいです。
ありがとうございます!
この先どうなるか、どうできるのかはまだわからないですけど、できるかぎりライバーと声の仕事とを両立しながら人が来やすい配信であり続けて、もっと自分の声のファンを増やすことをさらなる目標にしたいなって。
そのためにも、もっと新しいことにチャレンジしてできることを増やしたりいろんな要素を取り入れてみたり、新たな人と出会ったりしながら成長していきたいと思います。
自分が持っているカードを使って、自分がやりたいことを思うようにできるのがIRIAMの魅力だから。これからライバーをめざされる方も、まず自分がどんなカードを持っているかを知ることが大切だと思います。最初は半分も見えていなくても、配信を通して一枚ずつカードをめくっていったり、リスナーさんから求められることに応えるなかで手持ちが増えたりもすれば大丈夫。いろいろ模索して、自分の世界観を大事にしながら楽しい配信のかたちを見つけてほしいなって。
あと大切なのはリスナーさん側の視点を理解すること。
リスナーとして何度も枠に遊びに行って、視聴時間を重ねたりコメントしたりしながらファンバッジが取れた後にどんな気持ちになるのか。ライバーさんがどんなことをしたら応援したいと思えて、枠がどんな状況だと居づらいと感じるのか。配信をしているとなかなかリスナー活動の時間が取りづらくなるけれど、実体験することで何かのヒントが見えてくるものがあるし、配信するうえでいちばん勉強になるから。ただ目先の数字や勝ち負けだけに引っ張られることなく、いろんな経験を通して自分らしい、自分だけの枠づくりをしてもらえたらと思います。
私もまだまだ〝ひよっこ〟ですけど、一緒にがんばって殻を破っていきましょう!