INTERVIEW


雪尾紺Kon Yukio

現世でOLとして暮らす、浪花(大阪)の稲荷神。お社と呼ばれる配信を通じてリスナー(お稲荷さん)たちに寄り添い、癒しながら「日々を生きる皆の帰る場所」になりたいと願う、柔らかな関西弁のお狐さま。IRIAMは2019年6月デビュー。お稲荷さんたちからの愛あふれる信仰を集める一環として日々ライバー活動にいそしみ、イベントでも多数入賞。VTuberとしても活躍中。

ふさふさの尻尾がキュートな容姿。はんなりと耳に心地よい関西弁で、コロコロと笑いながら一人ひとりにやさしく語りかける声。その魅力を挙げるときりがないが、何より雪尾紺の圧倒的なすごさを見せつけられるのが3年半を超える活動期間。ライバーになれても、続けることは決して容易ではない。けれど雪尾紺は、皆がいつでも帰ってこられる場所であり続けるため、そのお社をきょうも開放し続け、多くの参拝者らをあたたかく迎え入れる。
帰れる場所があること。これほどうれしく、また自分を励ましてくれるものはない。

私なのに私じゃない
雪尾紺という存在

―本日は参拝の機会をありがとうございます! まずはご由緒から伺えますでしょうか?

私がライバーデビューした2019年って、VTuberという存在がまだまだ一般的ではなくて、私自身もよく知らなかったんです。だから配信活動についてお話をいただいたときも、最初は何か怪しいなって(笑)。世を忍ぶ姿とはいえ、普通にOLをしている自分になぜお声がけが? という驚きもあったし、有名になるとか配信者さんになるとか、まるで思いもよらなくて。

でも、もともとゲーム好きでゲーム配信は見ていたし、漫画やアニメも好きだったから、アプリには興味を覚えて。まずはダウンロードしてみようってところからですね。とにかく何もわからないままのスタートだったんです。

それでやってみたら、自分の顔に合わせて表情が動くとかめっちゃハイテクで、こんな技術があるんやってびっくりしたのを覚えてます。「雪尾紺」の姿と自分の中身が合わさって動いているのに感動したんですよね。

私なんだけど私じゃないというか......って間違いなく自分なんですけど。どこか俯瞰(ふかん)で見ている自分もいて、もう一つの「雪尾紺」としての個体が動いてしゃべってるというのか......うまく言えへんけど、すごいな、おもしろいなって。
さらにそのキャラが、配信を通じて多くの人に愛してもらえるってすごいことやなって。すごいというより不思議って感じかな。いまだに信じられへん時があります。

キャラといっても、特にキャラづくりをしているわけじゃないんですけどね。もちろん雪尾紺としての見せ方や性格を意識したり、立ち振る舞いを気にしたりはしますよ。でもこういう声でいこうとか、こんなイメージに寄せようとかではなくて、そこはまぎれもなく自分なんですよね。
けど、本当の自分より前向きで明るいというのも事実で。自分ではできんことでも雪尾紺ならやれるとか、自信を持って話せるとかはあって。あ、いまのは雪尾紺やな~とか、雪尾紺がまた口走ってるわ、みたいな感覚はあります(笑)。
自分一人じゃしないこと、できないことが雪尾紺だとできる理由は、「誰か見てくれる人がいる」から。リスナーさんがいてくれるからこそ、いつもは出ない一歩が踏み出せるんです。

―ステキなお話ですね。ちなみに神様でも初配信は緊張されました?

緊張どころか、とにかく不安で不安で。それまでVTuberさんの活動や配信を見たことがなかったし、IRIAMではほんまに自分の体ひとつというか、雑談でいくしかなくて。人見知りの自分が知らん人相手に話せるんか? そもそも人が来てくれるんか? とか、考えだしたらもう不安が止まらなくて。

自分と同じ時期にデビューしたライバーさんが60人くらいはいたのかな? 中には専業でやられてるプロのような人も混じっていたし、いろんな配信を見るかぎり皆さん慣れてはる人も多そうで、はたして素人の自分がこの中でやっていけるんやろかと。

でも結局は自分ができることをやっていくしかない。一概にライバーといっても、その人その人の色があると思うし、とにかくやるしかない。まずは失礼のないようにだけ心がけつつ楽しもう! って思いながら初配信に臨みました。

待っていてくれる人がいる
それだけで続けられる

―実際の初日はいかがでしたか?

まずは人が来てくれてよかったということ。あとIRIAMってほんまにラグがないから、普通に会話しているようにコメントを拾っておしゃべりすることができたので。もともとおしゃべり自体は好きやったから、思った以上に自然な感じで話せたんです。IRIAMでのライバー活動って、配信というよりコミュニケーションなんやなって。普段お話ししてるように、おしゃべりしてる感覚でやったら楽しんでできるんやなって。そう気づいてほっとしたというか、気持ちが楽になったんです。

それでも、毎回常に緊張はしています。そこはやっぱり人と人なので、慣れるってことは絶対にないですし、いまでも変わらず緊張感は持っています。

あと働きながらの配信という大変さはありますよね。当初は週3回程度、多くて週4回くらいでしたけど、それでも大変でした。仕事から帰ってきて、さっと家事を済ませて、そこから配信の準備をしてってなると結構バタバタなんですよね。慣れるまではほんまに大変でした。

―それがいまは基本毎日になって3年半超えって本当にすごいことだと思います。配信を長く続けるための秘訣はありますか?

そこでもやっぱり待ってくれてる人の存在が大きいですよね。
リスナーさんたちにはすごく応援してもらってますし、ギフトも決して安いものではないじゃないですか。それに皆さん自分の時間を削って来てくれるわけやから、ほんまありがたい話です。

だからリスナーさんたちにはその時間を楽しんでほしいし、来たことで元気になってほしい。明日はもっと楽しんでもらえるようになりたいし、そのためにできることはやりたい。やったらその分みんなに喜んでもらえて、できることが増えると配信の可能性も広がって、何より自分のやりがいになるんですよね。

長く続けてこられたのはそんな繰り返しを続けてきた結果であって、何か特別派手なことをやったとか、とっておきの秘策があるわけではないんです。
地道な取り組みって間違いなくしんどいんですけどね、でも楽しい。私自身もリスナーさんたちからたくさんの力やうれしい時間をいただいているので、恩返しというか、「お互いさま」ってほうが近いかな。そうですね、お互いさまという気持ちを大切にしています。

配信は〝一対一〟の
コミュニケーション

―当たり前のように話されていますが、実際にその境地までたどり着くのは並大抵ではないだろうなとは。長く続けられるなかで徐々に変化してきた感じですか?

始めた頃から「ちょうどいい距離感」をめざしてはいました。踏み込みすぎず、でも近くにいるよっていう距離感。もちろん最初のころはそれがどこなのかわからなかったし、そもそもリスナーさんの人数も少なかったので、配信を重ねるほど距離は近くなっていきました。けど近すぎても別れが早く来てしまうとか思い描く理想とは違っていたとか、さっきもお話ししたみたいにそこはやっぱり人と人なのでなかなか難しいですよね。とにかくいろんな経験を通して探り探りで測りながら、よりよい距離感を見つけてきたって感じです。

同時に入れ替わりの激しい世界でもあるので、リスナーさんの推しが変わってるとか、気づけばいなくなってるとか、一つひとつしっかりと落ち込んでしまう。いまだにショックだし、適当な態度であしらわれるときには傷ついたりむかついたりすることだってあります。そんなときは、いまここにいてくれる人を大事にすること。遠くに離れていった人ではなく、目の前にいてくれる人をちゃんと見るってことを心がけています。

一人ひとりを把握すること。名前だけじゃなく、プロフィールとかどういう状況でいるかなどもしっかり覚えておく。配信者とリスナーではなく、私と一人ひとりなんですよね。その場にいるみんなに向けて配信するのではなく、一対一のコミュニケーションがたくさんあるって感じです。だって一人ひとりに興味を持って話さないと、お互い楽しくないじゃないですか。

そうはいってもコメントは一気に入ってくるし、それらにもれなく対応するという話ではなくって。この場にいるみんなが嫌な気分になりそうだとか、変な流れになってしまいそうなコメントは読まないとか、そういう意味での取捨選択はうまくなったかもしれません。一見冷たいように聞こえるかもですが、配信ってコメントしてる人だけに満足してもらえばいいわけじゃなくて、その場や会話に入れない人や遠くで聞いてくれている人にも同じように楽しんでほしいので。そういった頃合いというか雰囲気というか、〝いい加減〟を日々の体感を通して見つけていく感じでしょうか。

―コミュニケーションに悩まれている方にはとても参考になるお話だと思います。
あと気になっていたのが「雪尾」で検索すると、紺さんの下にずらっとお名前が並ぶこと。それこそ総本宮と全国の稲荷神社のように見えてしまって。

あれ、すごいですよね。みんなが「雪尾紺」をちゃんと見つけ出してくれんのやろのかってときどき心配になります(笑)。昔のIRIAMには多かったと思うんですけどね、感覚的にはいまの「推しマーク」のようなもので。
リスナーさんがたくさんいらっしゃると、同じ枠内で名前が被ることが多々あるんですよ。それで、差別化するために紺ちゃんが名前を付けてよって言われることがあって。けど名前なんてそう簡単に付けていいものではないじゃないですか。だったら上に苗字をつけていいよっていうのが始まりです。お互いの距離が近かった昔はどこか身内のような関係性だったので余計かな。それが浸透して、広がっていって、いまに至っています。

別に名乗るための基準があるわけではないんですけど、苗字がつくと雪尾紺ファンであると公言するようなものなので、逆に負担になるんじゃないかと心配にはなりますね。あと、雪尾の名前を背負うからには暗黙の了解というか、外でもマナーはしっかり守ってや! って。そうでなくても自分のファンってだけでうれしいから、私もあんたらのことめっちゃ見つめてるでってプレッシャーをかけてます(笑)。

みんなと一緒だから実現した
配信活動から広がった可能性

―それはファンにとってたまらなくうれしい「圧力」ですね。お互いさまではないですが、すごく良い関係性が伺えます。

YouTubeとか他のプラットフォームは「舞台」というか、自分が一段上のステージに立って、リスナーさんに見て楽しんでもらう感覚。コメントも全部拾えるわけではないですしね。
それに対してIRIAMは、リスナーさんたちと同じ部屋で談笑しているような感覚なんです。バーチャルやからこそ可能な密な空間というのか、よりプライベートなこそこそ話をしてみんなで盛り上がっているような、身近な連帯感があるんです。

だから、うちのお社には「石油王」みたいな人がいないんですよ。ガチイベントとかで、一人とか限られた人の力で勝つパターンのことなんですが、うちにはそういう流れはなくて。一部に負担が偏ることにはなってほしくなかったんです。

どうしても「イベントに出る=みんなの力を借りる」ことになるし、それぞれの命を削ってまで応援してもらうことが申し訳なくもあるんですよね。

でもこれはがんばりたいってイベントがあったとき、たくさんのリスナーさんたちが力を結集して、勝たせてくれるんです。どうしても勝ちたいって思いが皆に伝わって、一人ひとりが動いてくれて、それが幾重にも積み上げられて得られた結果です。けど、イベント入賞に始まって、1位獲得、ミリオン達成、まさかのトリプルミリオンまで、こんなに力を貸してもらえるんやって驚いたし、私でもみんなと一緒ならここまでできるんやって自信も持てた。ほんまにみんなのおかげやなって。これからも自分らしい配信でより一層がんばらないとって思いました。

あと、イベントだけじゃなく、「企業案件」ともいわれている企業とのタイアップやコラボなども実現できるようになって。たとえばコンビニエンスストアで幾度かグッズの販促をやらせていただいていたのですが、その延長で先日は店内放送までさせていただく機会を賜ったんです。全国展開でのコンビニで私の声が流れるなんて、本当に夢のようでした。それも窓口となってくださったご担当者さまが、私のIRIAMやYouTubeでの配信をご覧になり、ライバー活動に向けた情熱や誠意、それを応援してくれるみんなの想いに触れて、評価してくださったことが大きくて。改めて感謝ですね。

雪尾紺がそこにいる
最強のキャラソン

―最近では、オリジナル楽曲のプロデュースイベント「オリソン」での入賞もありましたね。

歌って、私にとっては特別なものなんです。「できるようになったこと」の一つでもあるけれど、歌ならみんなの好きな時間に楽しんでもらえるし、キャラソンって「強い」じゃないですか。そのキャラの情報や魅力がぎっしり詰まってて、聞くだけでどういうキャラなのかが自然と伝わりますよね。それってすごいことやなって。

あと、IRIAMという公式で、プロの制作チームに楽曲を提供もらえることが何より大きくて。キャラソンは自分で依頼しても作れるんです。でもそれだと私の目線でしか作れないし、それが正解かの自信も持てない。その点オリソンなら、プロの方々が結集して、いろんな視点から雪尾紺を見たうえで、雪尾紺ならではの歌を作ってもらえる。実際デモ音源を聞いて、私より私のこと知ってるやんって驚いたくらい。いろんな発見があったし、どこに出しても恥ずかしくない、おもいきり自慢できるキャラソンになりそう。楽しみで仕方ないです。

レコーディングはめちゃくちゃ緊張しましたけどね。初めての経験だし、今後も一生ないかもっていう貴重な体験だし。でもスタッフの皆さんが本当にいい方ばかりで、親身になって一緒に楽曲を制作してくださって。楽しかったぁー、しみじみ幸せやなって。こんないい経験をさせてくれたリスナーさんたち、関わってくださったすべての方々に感謝です。
あ、今回のイルミナリー取材もびっくりやったし、めっちゃうれしいですよ(笑)。思わずやった! って叫びましたもん。

“「
」”

―お気遣いありがとうございます!(笑)
そうしていろんなことに挑戦されている雪尾紺さんですが、今後の目標はありますか?

そうですね。やっぱり私の配信に帰ってきてほしいし、帰ってきてくれる人が増えてほしい。目標としては当初から変わらず「皆がほっとできる場所になりたい」ってことですね。
初見の方でも、いつも来てくれるリスナーさんも、一度離れてご無沙汰してしまってる方も、いつでも帰ってきていいんだよって。時間ができたら帰ってきてくれればいい。絶対あなたのことを覚えてるから。別のプラットフォームから来た人でも名前でわかるし、数年越しに帰ってきた人もいるし、大丈夫だから。安心して帰ってきてって。 

こちらもちゃんと待ってないといけないからずっと配信を続けられているんですよね。一人でも毎日誰かが帰ってき続けてくれるからこそ、配信を続けられているし、それが3.5年を経ても地道に日々配信を続けていられるゆえんです。

逆に近頃は、毎日休みなく配信しているのをむしろ心配されていて、「たまには休んでどこか旅行に行ってくれば?」ってリスナーさんが。でも先日、レコーディングで上京したときも私、ホテルから配信してたんですよね(笑)。ほんまにお互いさまというか、やさしいリスナーさんたちに見守られてるなって。本当に良いご縁をいただけてるし、これからも大切にしたいなって思ってます。

あとはやっぱり、安心・安全な活動を続けてこの場を守っていくことですね。日々がんばってる人はもちろん、がんばってない・がんばれない人でも大丈夫だよって。声が大きい人もいれば小さい人がいたっていいし、明るくても暗くても関係ない。みんな安心して帰ってきてって。来てくれた人が少しでも元気になって、その夜きちんと寝られて、明日からも健康に過ごしてくれれば、それだけで十分なんです。

あ、でもフォロワーさんやチャンネル登録者さんは絶賛募集中ですので!(笑) いっぱい帰ってきてくださいね。皆さまの参拝を心からお待ちしてます!

―築き上げた年月があるから言葉にも重みや深みがあって、かっこいい目標ですね。
では最後に、悩みを抱えて前に進めないでいるライバーの皆さんに何かアドバイスをいただけますか。

あせらず、手の届くところから一個一個やっていったら、いつか巡り巡っていいこともあるよってことかな。VTuberやライバーっていまや花形というか、キラキラしてる世界を思い浮かべてライバーになったのに、実際はまったく違うってやきもきしちゃうこともあると思うんですよ。でもとりあえずいまのペースで無理なく続けて、いま応援してくれている人を大事にしてほしい。やり方も、進むペースも人それぞれでいいんです。人の縁ってほんまに大事やから、遠くのまだ見ぬ大勢に気を取られるのではなく、目の前の大切な人とのご縁を大切に育んでほしいなって思います。

それでもがんばりすぎたりへこたれたりしたときには、どうかお社に帰ってきてください。ウチはいつでも待っています!

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